スクワットの異なる負荷重量と最大床反力との関係
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説明
【目的】近年、アスリートのレジスタンストレーニングにおいて、挙上速度を基準としたトレ ーニング法(Velocity Based Training:VBT)が注目され、これまでの負荷重量を基準とした 伝統的なレジスタンストレーニングと比較して、筋力やパワーの有意な改善効果が報告されて いる。このトレーニング法の特徴は、ニュートンの第2法則(力=質量×加速度)に基づいて いることであり、仮に質量が同じであっても加速度が大きくなれば発揮する力は増大すること が、トレーニング効果に関与していると考えられている。また、挙上速度が向上することによ って、発揮される筋力が有意に高いことも示唆されている。 しかし、これまでの負荷重量を基準としたトレーニング法は、挙上重量が増大すれば発揮筋 力も向上するといった原理に基づいた仮説であり、実際に加速度が変化した条件で発揮筋力が 測定なされているわけではない。そこで、本研究ではスクワットの負荷重量における力(フォ ース)を、床反力計を用いて明らかにすることを目的とした。 【方法】対象者は大学ラグビー部に所属する男子選手13名(年齢:19.3±1.0歳、身長:175.6 ±5.6cm、体重:83.0±16.3kg)で、スクワット1RMの30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、 100%の負荷で、コンセントリック局面の動作を最大スピードで行うように指示し、それぞれの 負荷条件で試技を行った。スクワットのコンセントリック局面(CON)およびエキセントリッ ク局面(ECC)の鉛直成分の最大床反力はフォースプレート(キスラー社製)を用いて測定し た。負荷条件の比較には1要因分散分析を実施し、主効果が見られた項目は多重比較を行った。 有意水準は5%未満に設定した。 【結果】CON最大床反力は負荷に有意な主効果が認められ、多重比較検定の結果 60%,70%,80%,90%,100%1RMが30%,40%,50%1RMよりも有意に高値を示した。また、50%1RMは 30%1RMよりも有意に高値を示し、80%1RMは60%1RMよりも有意に高値を示した。ECC最大床反力 は有意な主効果が認められ、多重比較検定の結果70%, 80%, 90%, 100%1RMは30%, 40%1RMより も有意に高値を示し、100%1RM,60%1RMよりも有意に高値を示した。 【考察】CON最大床反力は60~100%1RMの負荷で、ECC最大床反力は70~100%1RMの負荷で高値を 示し、これらの負荷条件にはいずれも有意差が認められなかった。また、CONおよびECCの最大 床反力については被験者によって80~100%1RMの範囲内で最高値を示し個人差が認められた。 本研究の結果から、素早く立ち上がることを意識した条件下では、必ずしも100%1RMの負荷 で最大床反力が発揮されるわけではなく、個人によって最大床反力が発揮される負荷が異なる ため、コンセントリック局面の加速度がスクワットにおける下肢伸展動作の最大床反力に影響 を及ぼしたと考えられる。 【現場への提言】CON最大床反力は60~100%1RMの負荷で、ECC最大床反力は70~100%の負荷で最 大値を示し、さらに最大床反力が発揮される負荷に個人差が認められた。したがって、トレー ニング時には単一の負荷条件で行うよりも80~100%1RMの範囲で複合的な異なる負荷条件で素 早い立ち上がり動作を意識させたレジスタンストレーニングを行うことが下肢筋力の増加に有 効的であると考えられる。
収録刊行物
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- 日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
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日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 2018 (0), 24-, 2018
日本トレーニング指導学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390865563463165696
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- ISSN
- 24343323
- 24337773
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可