磁化プラズマにおける一発大波の励起
書誌事項
- タイトル別名
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- Excitation of Freak Waves in Magnetized Plasmas
説明
<p>プラズマは典型的な非平衡・非線形媒質であり,多彩な動的な振る舞いを見せる.プラズマの塊である太陽に目をやれば,フレアと呼ばれる爆発現象があり,太陽のエネルギーや質量が突発的に放出される.実験室プラズマにおいても,蓄積されたエネルギーやプラズマが突然放出される現象が観測され,プラズマの閉じ込めを利用する核融合への応用などを考えれば,こうした振る舞いを制御することが重要な問題となる.</p><p>動的な性質を含め,プラズマの性質を理解する一つの鍵はプラズマに励起される乱流にある.プラズマには電流や温度や密度などの勾配等,様々な乱流の駆動原因がある.一旦励起された乱流はプラズマの多彩な振る舞いの源となる.</p><p>核融合への応用を念頭に,磁場により磁力線垂直方向の運動が制限されるプラズマ(磁化プラズマ)を例にとろう.磁化プラズマでは密度勾配が原因となりドリフト波が励起される.ドリフト波が相互作用し乱流が発達し,この乱流がプラズマの閉じ込め特性を決めると考えられている.輸送を引き起こし分布を平坦化させる一方で,ドリフト波乱流は帯状流やストリーマーといった多種多様な2次的構造を生み出す.乱れた中から次々に生み出されてくるこれらの非線形構造は核融合の閉じ込めに代表されるプラズマの振る舞いを理解するための鍵を握る.</p><p>最近の研究では,新しいタイプの非線形構造,すなわち海洋で報告されている一発大波と同様の非線形波動が磁化プラズマでも励起されることを明らかにしている.ここで,一発大波とは,海洋で観測された海面の突然の上昇を引き起こす波のことである.核融合プラズマにおける「一発大波」はプラズマ揺動の振幅の突然の上昇ならびに輸送フラックスの変化を引き起こす.</p><p>磁化プラズマで一発大波が励起されることを,まずは理論的に定式化し予測した.ドリフト波を例にとり,その非線形発展を定式化した.ドリフト波は非線形相互作用することで帯状流やストリーマーを励起する.これらの非線形構造からのフィードバックを取り入れると,ドリフト波のダイナミクスを記述する非線形シュレディンガー方程式を導くことができる.このモデルに基づき,ドリフト波からブリーザーと呼ばれる過渡的な振幅の変動を引き起こす非線形波動の励起が予測できる.</p><p>理論から見えてくるブリーザーの主要な特徴をまとめる.まず,ブリーザーが発生する条件を考えると,ドリフト波の振幅に由来する非線形効果が,波の分散から来る安定化効果を打ち破る場合に変調不安定性が起こり,この変調不安定性がさらに発展する中からブリーザーが生まれることが予測される.また,他の突発的な振幅変化と比較すると,ブリーザーの特徴は振幅の変化のみならず位相の変調にも特色があることがわかった.</p><p>理論から予測される性質を指針として,ブリーザーの励起を磁化プラズマ実験のデータの中から探し出すことができる.空間構造,時間構造(振幅と位相変化)を比較することで,ドリフト波からブリーザーが励起されることを世界で初めて検出した.また,振幅の変化が2倍を超えることから一発大波が励起されていること,密度フラックスが過渡的に増加することがデータ解析から示されている.</p><p>磁化プラズマにおける一発大波の励起はプラズマの動的な振る舞いを理解するための鍵となる可能性がある.更なる進展を期待したい.</p>
収録刊行物
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- 日本物理学会誌
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日本物理学会誌 80 (1), 26-30, 2025-01-05
一般社団法人 日本物理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390865718381386496
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- ISSN
- 24238872
- 00290181
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可