市場競争と供給者誘発需要
書誌事項
- タイトル別名
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- Market Competition and Supplier-Induced Demands:
- Analyzing Medical Expense from Micro-Data in Japan
- -医療費支出のマイクロデータ分析
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説明
<p>近年の人口高齢化の進展によって、急増する医療支出の持続可能性に対する関心が集まっている。事実、政府は限られた財源の中での医療費の増加に対応するため、診療報酬の引き下げや病床規制といった医療費抑制政策を実施してきた。しかしながら、医療市場では一般的な患者と医療サービス供給者の間に医療の知識に対する情報の非対称性が存在することから、医療施設間の市場競争の中で供給者が医療サービス需要を誘発する、いわゆる「供給者誘発需要」が発生しやすく、期待された医療費抑制の効果が得られない可能性がある。先行研究によると供給者誘発需要は、人口当たりの医療施設等で測られる医療供給密度の高さに地域の1人あたりの医療費が相関することで確認される。本稿はそれに倣い、人口比の医療施設数が供給者誘発需要に影響を与えるかを日本の医療市場で検証した。日本における供給者誘発需要の研究はマクロデータやレセプトデータを用いたものが多く、患者の属性をコントロールした分析が少ないことから、本稿は患者の属性データを用いた研究の不在を埋めるものである。具体的には、大阪大学が行った全国の家計調査である「くらしの好みと満足度に関するアンケート調査 2011」から患者の年齢・性別・健康に対する意識・世帯年収等のデータを抽出し、医療供給密度と一人当たり医療支出の関係を検証する際のコントロール変数として用いた。検証においてはTwo-part modelを用いて、患者の自発的な需要を表す受診回数と、供給者によって誘発された需要を示す受診1回あたりの医療支出に分けて分析した。その結果、医療施設の供給密度は受診回数には正の影響を与えた一方、受診1回あたりの医療支出と全体的な医療支出には影響しないことが分かった。すなわち、日本の医療市場において、供給者誘発需要の存在が疑われるような医療供給密度によるサービス供給量の増加は、患者の属性をコントロールした上でも、発生していないことが観察された。</p>
収録刊行物
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- 医療経済研究
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医療経済研究 25 (2), 114-125, 2014-07-31
医療経済学会/医療経済研究機構
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390865961586808192
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- ISSN
- 27594017
- 1340895X
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可