成人肺炎診療ガイドライン2024から読み解く高齢者肺炎

  • 岩永 直樹
    長崎大学病院呼吸器内科(第二内科)
  • 迎 寛
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学分野教授(第二内科)

書誌事項

タイトル別名
  • Pneumonia in the elderly from the perspective of adult pneumonia practice guideline 2024 in Japan

説明

<p>成人肺炎診療ガイドライン2024が発刊され,抗菌薬適正使用と高齢者肺炎への対策を主なテーマとして挙げている.COVID-19の流行やウイルス性肺炎の疾病負荷をふまえて,ウイルスに関して追記され,また近年の遺伝子解析技術の進歩を考慮して検査領域についても詳述された.正確な病原体診断は適切な抗菌薬使用に不可欠であり,薬剤耐性への対策上も重要な課題と考えている.</p><p>肺炎は日本人の死因上位であり,超高齢社会をひた走る本邦にとって高齢者肺炎は,最早社会問題となっている.その多くは誤嚥性肺炎であり,抗菌薬投与のみでは根本的な改善に至ることは難しく,包括的なアプローチと予防が重要である.また誤嚥性肺炎に広域抗菌薬は不要であることが,システマティックレビュー・メタアナリシスによって明らかにされてきており,予防医療の観点から,肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの定期接種の推進,口腔ケアの重要性についてもより強調されている.</p><p>ガイドライン改訂時においては医療・介護関連肺炎の扱いが大きな議論点となった.医療・介護関連肺炎は耐性菌リスクを十分に反映せず,過剰な広域抗菌薬投与につながることが危惧されてきた.成人肺炎診療ガイドライン2024では,日本の医療制度や死生観にフィットした分類でもあり継続して使用することになったが,逆に広域抗菌薬投与へのハードルを上げることで,抗菌薬適正使用に貢献することが期待されている.</p><p>また,患者背景のアセスメントが肺炎の分類によらずに推奨されており,高齢者肺炎の多い本邦においては重要なアプローチである.将来の医療・ケアについて患者が主体的に医療・ケアチームと繰り返し話し合い,意思決定を支援するプロセスであるアドバンス・ケア・プランニング実施がより推奨されており,医師,歯科医師,リハビリテーション専門職など多職種連携の必要性がこれまで以上に高まっているといえるだろう.</p>

収録刊行物

参考文献 (23)*注記

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