中間言語語用論と待遇コミュニケーション研究

説明

<p>本論文は、中間言語語用論 (interlanguage pragmatics) の発展を概観し、日本における待遇コミュニケーション研究との関係を考察する。</p><p>中間言語語用論は、1970年代末に誕生した、第二言語学習者の語用論的知識の使用と習得を研究する分野である。当初は異文化間語用論の影響を受け、学習者の語用論的特徴を目標言語の母語話者と比較する研究が主流だったが、1990年代には発達過程や学習環境の影響を探る習得研究が進み、習得研究としての方向性が強まった。2000年代以降は第二言語習得 (second language acquisition: SLA) の理論を取り入れ、語用論的知識の教育(指導的介入の効果)や学習者の個人差要因にも関心が広がった。2010年代になると、会話分析 (conversation analysis: CA) の手法を応用して談話レベルの連鎖構造が分析されるようになり、相互行為能力としての語用論的能力が提唱されるに至っている。</p><p>一方、敬語の研究から始まった日本語の待遇コミュニケーション研究は、日本語教育という文脈の中で、その射程を敬語表現、待遇表現、待遇コミュニケーションと広げてきており、「人間関係」と「場」、コミュニケーション主体の「意図」と「待遇意識」など、語用論と共通する概念が理論的枠組みとして利用されている。「習得過程」の解明への関心が見られない点が異なるものの、日本語非母語話者の日本語を対象とした待遇コニュニケーション研究は、「待遇コミュニケーション研究でもあり、中間言語語用論研究でもある」と言えよう。</p><p>このように、異なる背景と経緯を持つ中間言語語用論と待遇コミュニケーション研究ではあるが、両分野の知見を統合することで、より包括的な研究の可能性も見えてくるものと思われる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390866647408693248
  • DOI
    10.32252/tcg.22.0_117
  • ISSN
    24344680
    13488481
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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