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説明
生成AI が登場してから2 年以上が経った時点で,生成AI が過去の科学技術と異なる点が分かって来た。一つは技術開発のスピードが非常に速いことである。動画生成AI は2025 年に一歩先に進んだ。Sora「storyboard」とPika2.0「Scene Ingredients」である。人物と背景を入れて,「連続したシーン=物語(ストーリー)」を作れる。視点が「イラストレーター」「クリエイター」から「プロデューサー・監督」に変わった。またグーグル「Veo」では1 分~2 分の動画生成が出来,4K60FPS のクオリティとなっている。 AI に期待されるのは,「データサイエンス」や「DX」教育による生産性・効率性を高める単純な自動化・省力化ではない。人とAI は対立するものでも置換されるものでもなく,「共創」する存在である。AI 革命は第1波のデータサイエンス・DX に代表される「予測・自動AI」から第2 波の「生成AI」にシフトした。表1 が示す通り,数学が苦手な文系学生には第1 波の「データサイエンス」「DX・自動化」は面白いものではなく,第2 波が「クリエイティブ(創造)」の喜びを付与してくれた。社会で不足するのは,AI を使った開発ができるエンジニアであり,理系というイメージが強いが,実際にAI を活用するのは文系分野である。文系の学部・学科こそ,「活用」という意味でのAI スキル取得を促進すべきであり,「専門性」+「AI」=「新分野の勉強・研究」という組み合わせがイメージし易い。開発者が足りないというのはあくまでも目先の問題であり,最終的にAI を利用できる分野は文系に幅広く残る。今後,AI は2025 年から始まった第3 波の「AI エージェント」を経て最終ゴールの第4 波の「汎用AI(AGI)」へ向かう。日本のデジタル競争力はスイスのビジネススクールIMD によれば,世界64 カ国・地域で32 位である。「人材」は49 位,「デジタル・技術的スキル」は63 位に沈む。日本の大学教育が世界から大きく遅れた理由は第1 波の「予測」で留まり新段階に挑戦しなかったことにある。データサイエンスが唱える「人を技術の下の奴隷(下僕)にする」考え方(効率優先)ではなく,「テクノロジーの進化と共に人間が共進する」世界への挑戦を考えた。「誰のための教育か」を考え効率化ではなく価値創造に挑戦する。
収録刊行物
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- 江戸川大学紀要
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江戸川大学紀要 35 53-76, 2025-03-15
江戸川大学
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390866890516667264
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- NII書誌ID
- AA12560773
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB