地域在住高齢者の身体的フレイルと睡眠の質指標との関連性

説明

<p>【はじめに、目的】</p><p>フレイルは多面性を有し包括的な概念とされ、多くの高齢者は フレイルを経て要介護状態へ至る。フレイルは可逆性を有し、積極的な予防策を図ることで、フレイルの予防・改善の促進が期待されている。運動の専門家である理学療法士は身体的フレイルの評価や介入に関わることが多いと推測できるが、睡眠の量とフレイルとの関係性の報告(Goldman SE, 2007)からも、身 体的フレイルの評価に加えて、睡眠状態を把握することが重要と考える。本研究の目的は地域在住高齢者のフレイルと関連する要因について、身体機能と睡眠の質から検討することである。</p><p>【方法】</p><p>対象はA市と演者所属施設共催の「シニアの体力測定会」に参 加した65歳以上の地域在住高齢者112名 (女性86名、男性26名、平均年齢75.5±5.4歳)とした。身体的フレイルの判定には日本語版CHS基準を用い、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動を判定の要素とし、1~2項目に該当する者をプレフレイル、3項目以上に該当する者をフレイルと判定し、それらを数値化した。身体機能は、握力、2ステップ値、通常歩行速度、片脚立ち時間、筋量、足趾把持力を計測し、呼吸機能として%努力性肺活量、1秒率を計測した。また、認知機能評価として 日本語版Montreal Cognitive Assessmentを用い、睡眠の質評価には主観的睡眠評価である日本語版ピッツバーグ睡眠質問票 (PSQI)を用いた。統計解析は身体的フレイルを目的変数、年齢、身体・呼吸機能、認知機能、PSQIスコアを説明変数とした重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>日本語版CHS基準による判定では、フレイル2名(1.8%)、プ レフレイル40名(35.7%)、ロバスト70名(62.5%)であった。 PSQIスコアは平均8.0±2.2点であり、睡眠障害ありと判定される6点以上は96名(85.7%)であった。フレイルを目的変数とした重回帰分析の結果、歩行速度、片脚立ち時間、PSQIスコアが有意な説明変数として検出された (調整済みR2=0.15, p<0.01)。</p><p>【考察・結論】</p><p>本研究の結果、身体的フレイルの有意な説明変数として歩行速 度と片脚立ち時間に加えて、PSQIスコアが検出されたことから、身体機能と同様に睡眠の質にも着目して評価・介入する必要性が示唆される。今回は睡眠の質評価としてPSQIの総合スコアを対象としたことから、今後は入眠時間や眠剤の使用など各項目についてのより詳細な解析が必要と考える。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は城西国際大学「人を対象とする研究倫理委員会」の承認を得て実施した (承認番号:14N230013)。なお、すべての被験者には文書および口頭にて研究の趣旨を説明し、書面により同意を得た。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ