日本総合健診医学会 第48回大会・共催シンポジウム2 人間ドック健診で診る高中性脂肪血症 脂質の数値ではなく動脈硬化性疾患発症リスクを有する動脈硬化惹起性リポ蛋白の多寡に着目した脳心血管疾患イベントリスクの評価

  • 増田 大作
    りんくう総合医療センターりんくうウェルネスケア研究センター、健康管理センター、循環器内科

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タイトル別名
  • Evaluation of Event Risks of Cerebro- and Cardiovascular Diseases by Focusing on the Profile of Atherogenic Lipoproteins Developing Atherosclerotic Plaque, not the Value of Lipids

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抄録

<p> 健康診断において現在、脂質異常は動脈硬化性疾患発症リスクの観点から疫学的なデータを背景として脂質値[LDLコレステロール、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール値]が測定されそれぞれのカットオフ値を用いて評価が進められている。LDLやHDLの粒子数と直接的な相関のあるLDL・HDLコレステロール値は動脈硬化性疾患イベント評価に有用であるが、空腹時TG値はばらつきが多くまた同程度の数値であってもリポ蛋白プロファイルが異なるとリスクの程度は大きく異なる。このため、健康診断で採用されている脂質値のみならず、リポ蛋白プロファイルを評価するマーカーの開発が必要とされてきた。高TG血症の動脈硬化性疾患発症リスクの背景にはTGを含むレムナントリポ蛋白の蓄積が存在する。この評価のためにレムナントコレステロール値(RLP-CあるいはRemL-C)が存在するが、我々は独自に小腸由来カイロミクロンレムナントを反映するアポ(リポ蛋白)B-48濃度の測定系を開発した。空腹時アポB-48濃度は、健康診断での健常例の検討でReference Interval;0.74-5.65μg/mL、基準値上限;5.7μg/mLと低値であったが、レムナントによる動脈硬化リスク状態にあるIII型高脂血症、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病症例で上昇していた。さらに空腹時アポB-48濃度は、空腹時TG値が正常高値(100-150mg/dL)の症例において頚動脈中膜内膜複合体肥厚と正相関しており、冠動脈カテーテル検査の連続症例における冠動脈狭窄有病者、ステント留置後の新規狭窄病変や脳大血管の梗塞の発症の有病率に関連していた。このように、空腹時アポB-48濃度測定はカイロミクロンレムナントの蓄積を反映する、独立した動脈硬化の危険因子の評価系として確立し得た。健康診断でのTG値測定は重要であるがリポ蛋白異常の検出が動脈硬化性疾患発症リスク推定には重要であり、アポB-48濃度測定などのリポ蛋白プロファイル解析が活用されるべきである。</p>

収録刊行物

  • 総合健診

    総合健診 47 (6), 660-668, 2020-11-10

    一般社団法人 日本総合健診医学会

参考文献 (21)*注記

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