水産物輸出拡大がもたらした沿岸漁業における構造変化とその課題

書誌事項

タイトル別名
  • The Structural Transformation of Coastal Fisheries Affected by the Fishery Product Export Expansion and its Problems
  • 水産物輸出拡大がもたらした沿岸漁業における構造変化とその課題--青森県と山口県におけるナマコの対中国輸出を事例として
  • スイサンブツ ユシュツ カクダイ ガ モタラシタ エンガン ギョギョウ ニ オケル コウゾウ ヘンカ ト ソノ カダイ アオモリケン ト ヤマグチケン ニ オケル ナマコ ノ タイ チュウゴク ユシュツ オ ジレイ ト シテ
  • The Case Studies of Sea cucumber Export to China in Aomori and Yamaguchi
  • 青森県と山口県におけるナマコの対中国輸出を事例として

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抄録

<p>近年、水産物輸出が拡大している。特に、その輸出市場として中国が重要になっている。その中国を含む海外市場に、国内の沿岸漁業におけるローカル資源が輸出を介して結びつくという新しいグローバリゼーションの形態が一般化してきた。こうした状況のもと、グローバリゼーションの新たな展開とその変化が、産地にどのような影響をもたらしているのだろうか。本研究では、産地の構造変化の実態を具体的事例の検証から明らかにする。調査対象としてナマコ輸出を取りあげ、ナマコの対中国輸出における主要供給地である、青森県陸奥湾地域と山口県周南市を調査対象地域とした。</p><p>第1に生産においては、輸出拡大における価格上昇を背景に、漁獲努力量が拡大、乱獲が発生し、資源管理規制が強化されたもののその効果はなかった。また、2008年以降の中国需要の縮減、輸出縮小を背景に価格が下落する。そこでは既にサイズの小型化が存在し、そうした状況に対しては積極的な対応は見られなかった。第2に加工においては、輸出拡大に際し新規参入が多くみられ、その製品形態は乾燥品から経営上の効率性が高い塩蔵品へと転換が図られた。しかし輸出縮減期以降は、取引形態は台湾や香港との固定的取引から、全国から塩蔵品を集荷する大連の2次加工業者とのスポット取引が増え、そのような新規参入業者との取引は安定的な決済が行われず新たなリスクが発生している。</p><p>海外市場は常に変化する可能性を孕んでおり、そのような海外市場とローカル資源との関連性が強化される中で持続的な産地形成を維持するためには、厳しいリスク管理と実効性のある資源管理規制が必要であろう。</p>

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