移住女性の安全な定住と福祉・法制度に埋め込まれたジェンダー規範

書誌事項

タイトル別名
  • Revealing the Embedded Gender Norms in the Social Welfare and Legal Systems of Japan:
  • 移住女性の安全な定住と福祉・法制度に埋め込まれたジェンダー規範 : ひとり親となった在日タイ女性の事例から
  • イジュウ ジョセイ ノ アンゼン ナ テイジュウ ト フクシ ・ ホウセイド ニ ウメ コマレタ ジェンダー キハン : ヒトリ オヤ ト ナッタ ザイニチ タイ ジョセイ ノ ジレイ カラ
  • Through the Experience of a Thai Single Mother and Her Struggle for Safe Settlement
  • ひとり親となった在日タイ女性の事例から

この論文をさがす

抄録

日本における「移民の女性化」が顕著になった1985年から2005年の間に,フィリピン女性と並び多数のタイ女性が来日した。当初その多くは,性産業に従事する人身取引のルートで入国し,その結果ビザ発給の厳格化により日本人配偶者として入国するようになった。中にはその後国際結婚が破たんし,ひとり親として日本で再出発する女性も多く存在する。筆者は17年間,ケースワーカーとしてこのような移住女性とその家族への支援を行ってきた。本稿は,すでにケースワークを終了した後に再会した,ある在日タイ女性の経験から,彼女たちの離婚の際の意思決定に着目する。「日本国籍の子どもは日本人の夫といる方がいい」という女性の決断は,日本の母子福祉支援と家族や入国管理法に埋め込まれた「日本的」なジェンダー規範から外れており,結果として日本からの本人の退去強制と母子の離別を生む危険性を孕んでいた。本論文では,彼女の母国で内面化したジェンダー規範に沿った意思決定が,「日本的」なジェンダー規範とそれに基づく日本の諸制度とどのように交差して,移住女性の日本における安全な定住を脅かすのかを明らかにする。外国人を家族として迎え入れる現実を直視し,日本の諸制度に埋め込まれたジェンダー規範を明らかにすることが社会的な課題であると位置づける。この研究が,異なるジェンダー規範を背景に持つ移住女性たちの,日本への安全な定住のための一助となることを期待する。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ