直接訓練開始を判断するための臨床的基準の検討

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  • Decision-making for starting direct therapy for dysphagia

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説明

<p>直接訓練開始を判断するための臨床的な基準に関して検討を行った.対象は当院へ転院時,嚥下障害のため経口摂取の経験のない症例21例である.対象者を直接訓練に移行できた経口摂取群14例と直接訓練へ移行できなかった非経口摂取群7例に分け比較検討を行った.</p><p>直接訓練開始に影響を与えると想定された要因は1)覚醒状態,2)認知レベル,3)身体能力,4)肺炎の既往,5)口腔運動機能,6)日常の唾液嚥下,7)反復唾液嚥下検査,8)改訂水のみテスト (3ml),9)嚥下造影検査 (VF)/嚥下内視鏡検査 (VE)であった.このうち両群の間で統計的に有意差のあった項目は1)覚醒 (p<0.05),4)肺炎の既往 (p<0.01),5)口腔運動機能 (p<0.05),6)日常の唾液嚥下 (p<0.01),9)VF/VE (p<0.05) の5要因であった.</p><p>有意差のあった5要因を単独要因とし,これに5要因の任意の組み合わせからなる31個の複合要因を加えた計36個に対して,感受性,特異性,一致率を算出し,両群の判別のための最適な方法を検討した.</p><p>単独要因を用いた場合,一致率の低さ (平均0.76±0.03) から両群を判別するには不十分であった.一致率の高さ,感受性の高さを基準に複合要因を検討した場合,判別に最も適した複合要因は複合要因V{覚醒・肺炎・口腔機能・VE/VE},複合要因W{覚醒・肺炎・唾液嚥下・VF/VE},複合要因 Z{覚醒・肺炎・口腔機能・唾液嚥下・VF/VE}であった (3複合要因とも感受性1.00,特異性0.92,一致率0.95).VF/VEが施行できない環境を想定し,VF/VEが含まれない複合要因11個を比較検討した.一致率が0.9以上の複合変数は6個あった.</p><p>複数の要因を用いて点数化し経口摂取群を判別する方法は直接訓練開始判断に有益であり,VF/VEが施行できない環境での判断方法にも示唆をあたえるものである.</p>

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