母性を司る愛情ホルモン、オキシトシン ~「母は強し」を支える多彩な作用とは?~

  • 宮野 加奈子
    国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野 東京慈恵会医科大学 医学部 疼痛制御研究講座
  • 吉田 有輝
    東京理科大学大学院 薬学研究科 分子病理・代謝学研究室
  • 坂本 雅裕
    東京慈恵会医科大学 医学部 疼痛制御研究講座
  • 上園 保仁
    東京慈恵会医科大学 医学部 疼痛制御研究講座

説明

<p>オキシトシンは、9 つのアミノ酸から構成されるペプチドホルモンであり、子宮</p><p>収縮を促すホルモンとして 1906 年に発見された。オキシトシンは視床下部室傍 核(PVN)および視索上核(SON)で合成後下垂体後葉から分泌され、当 初は "出産や子育てに関連するホルモン" として、子宮収縮や乳汁分泌などの 生理作用をもつと考えられていた。しかしその後多くの研究により、オキシトシン は母性・社会行動の形成、抗ストレス、摂食抑制など非常に幅広い生理作用 を持つことが明らかとなり、"愛情ホルモン" あるいは "幸福ホルモン" と呼ばれ るようになった。</p><p>漢方薬「加味帰脾湯」は 14 種類の生薬で構成されており、神経症、精神 不安、不眠症、貧血などに対して処方され、その効果はオキシトシンの作用と 一部共通している。しかしながら、加味帰脾湯がオキシトシンシグナルに及ぼす 影響については不明である。本講演では、加味帰脾湯がオキシトシン受容体な らびにオキシトシン分泌に関わるイオンチャネルにどのような作用を有するかとい う私たちが最近行っている研究の一部を紹介する。</p><p>加えて近年、オキシトシンは PVN および SON に加え、脳や脊髄に投射しているオキシトシンニューロンからも分泌され、鎮痛作用を有することが明らかに されてきた。オキシトシンの鎮痛作用には、オキシトシン受容体を介する経路お よび受容体を介さない経路が報告されている。後者はオキシトシン受容体に似 た構造をもつバソプレシン1A 受容体、ならびに痛みのセンサーのひとつである transient receptor potential Vanilloid 1 (TRPV1) などが関与しているこ とが報告されている。加えてオキシトシンの鎮痛作用に、オキシトシンによる内 因性オピオイドの増加、ならびに オ オピオイド受容体の関与が報告されており、 オキシトシンの鎮痛作用にオピオイドシグナルの関与が示唆されている。しかし ながら、オキシトシンのオピオイドシグナルに対する詳細な作用については不明 である。そこで、加味帰脾湯のオキシトシンシグナルに対する作用に加えて、オ キシトシンのオピオイド受容体を介するシグナルへの作用について、当研究室で の研究成果を紹介する。本講演がオキシトシンの多彩な作用を説明する一環 となれば幸いである。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1391131406293817344
  • NII論文ID
    130007962485
  • DOI
    10.34597/npc.2020.2.0_es-2
  • ISSN
    24358460
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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