生物学的直接覆髄剤開発に向けた生理活性物質RVX-208の歯髄細胞における機能解析
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- 松本 昌大
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 藤原 千春
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 島袋 善夫
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 山本 優
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- Teerachate NANTAKEERATIPAT
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 北垣 次郎太
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 八木 寛子
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 林 聡子
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 岩山 智明
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 柏木 陽一郎
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 三木 康史
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 北村 正博
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 沢田 啓吾
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 木下 茉優
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
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- 村上 伸也
- 大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 (口腔治療学教室)
書誌事項
- タイトル別名
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- The Functional Analysis of RVX-208 in Human Dental Pulp Cells: An Initiative for the Application of a Bioactive Compound, RV-208, on Direct Pulp Capping
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抄録
<p> 目的 : 水酸化カルシウム製剤やMineral Trioxide Aggregate (MTA) を用いた直接覆髄法が一般的に用いられているが, これらは, 歯髄組織に広範な壊死を引き起こすという欠点を有する. このため, 歯髄細胞への傷害性の少ない新たな直接覆髄材 (剤) の開発が期待されている. 生理活性物質の一つであるRVX-208は, エピジェネティクスに遺伝子発現を変化させることで, 炎症や骨代謝の制御に重要な役割を担うことが報告されているが, 歯髄細胞における機能は不明である. そこで本研究は, RVX-208の歯髄細胞に対する毒性評価および同細胞におけるRVX-208の機能を検討することで, 生物学的直接覆髄剤として必要な機能の一端をRVX-208が有するのか否かを検討することを目的とした. </p><p> 材料と方法 : 大阪大学歯学部附属病院にて矯正治療のために便宜抜歯された第一小臼歯を抜髄し, outgrowth法を用いて単離したヒト歯髄細胞 (hDPC) を実験に供した. RVX-208がhDPCに及ぼす細胞毒性については, ヨウ化プロビジウム (PI) 染色にて検討した. そして, RVX-208がhDPCの増殖に及ぼす影響については, ブロモデオキシウリジン (BrdU) アッセイを用いて検討した. さらに, hDPCをRVX-208存在下で石灰化誘導し, 培養18日目における石灰化物の形成を, アリザリンレッド染色法を用いて検討した. 加えて, 石灰化誘導過程におけるhDPCの象牙芽細胞分化関連遺伝子の発現をリアルタイムPCR法を用いて検討した. </p><p> 結果 : RVX-208 (0~100nmol/l) は, hDPCの死細胞率を増加させることはなかった. BrdUアッセイの結果, RVX-208 (0~100nmol/l) はhDPCの増殖を損なうことはなかった. 一方, アリザリン染色の結果より, hDPCの硬組織形成細胞への分化誘導18日目において, RVX-208 (0~100nmol/l) は濃度依存的にhDPCの石灰化物形成を促進することが明らかとなった. さらに, リアルタイムPCR解析の結果より, hDPCの硬組織形成細胞への分化過程において, RVX-208 (0~100nmol/l) は, hDPCにおけるアルカリホスファターゼ (ALPL) およびⅠ型コラーゲン (COL1A1) 遺伝子の発現を低下させた. 一方, RVX-208 (0~100nmol/l) は, hDPCにおける象牙質シアロタンパク (DSPP) およびデンチンマトリックスプロテイン1 (DMP1) の遺伝子発現を上昇させた. 加えて, 石灰化誘導6日目において, RVX-208 (0~100nmol/l) はhDPCのRunt-Related Transcription Factor-2 (RUNX2) の遺伝子発現に影響を及ぼさなかったが, 石灰化誘導18日目において, 100nmol/l RVX-208はhPDCのRUNX2遺伝子発現を有意に抑制した. </p><p> 結論 : 生理活性物質RVX-208は, 歯髄細胞に対して毒性を示さず, その増殖を損なうことなしに, 歯髄細胞の硬組織形成細胞への分化および石灰化を促進することが明らかとなった. すなわち, RVX-208は安全で有効な直接覆髄剤の一候補となる可能性が示唆された.</p>
収録刊行物
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- 日本歯科保存学雑誌
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日本歯科保存学雑誌 63 (6), 527-535, 2020
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1391131406294967552
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- NII論文ID
- 130007964659
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- ISSN
- 21880808
- 03872343
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可