O-1-S03 乳幼児期に拘束性換気障害を呈した脳性麻痺児に対する呼吸理学療法の経験

DOI
  • 石原 美智子
    愛知県心身障害者コロニー中央病院 総合診療部 リハビリテーション室
  • 栗林 健
    愛知県心身障害者コロニー中央病院 総合診療部 リハビリテーション室
  • 鈴木 健史
    愛知県心身障害者コロニー中央病院 小児神経科

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抄録

はじめに 呼吸理学療法では、重症心身障害児(者)の拘束性換気障害に対し、胸郭周囲筋群の筋緊張緩和や姿勢管理などを行うことで進行予防に努める。今回、乳幼児期に胸郭変形が進行し呼吸不全に陥った脳性麻痺児に対する呼吸理学療法を経験したので報告する。 症例 6歳男児。横地分類A1−Cの超重症児。在胎35週5日、2,257g、Apgar score4/6点で出生し、頭部MRIでは大脳基底核、脳幹に病変を認めた。生直後、気管内挿管による人工呼吸器管理を要したが、2か月時、人工呼吸器は離脱できた。抜管困難であったため3か月時、気管切開術を施行したが、呼吸器症状は不安定な状態が続いた。5か月時、胃瘻造設術、噴門形成術を施行した後、呼吸器症状は安定した。呼吸理学療法開始した3か月時は、明らかな胸郭変形は認めなかったが、僧帽筋、大胸筋、胸鎖乳突筋などの過緊張により、徐々に肩甲帯は挙上、屈曲を強め、脊柱は後弯、胸郭は左右径が短縮した。誤嚥予防のための側臥位中心の姿勢管理が胸郭変形を助長することを考慮し、腹臥位も試みたが気管カニューレの事故抜管の危険性があるため継続困難であった。胸郭は、1歳前から側方が内凹する変形が徐々に進行し、2歳前には、吸気時に陥没するようになり、経皮的CO2分圧は高値を示した。2歳1か月時、肺炎の治療目的で人工呼吸器療法を開始したのを契機に、筋弛緩薬の増量や上部胸郭を開くための軽度側臥位や腹臥位の導入等、内科的治療を含めた見直しを行った結果、経時的な胸部CTでは徐々に胸郭変形・肺容量の改善を認め、肺炎の罹患頻度も減少した。 考察 乳幼児期に胸郭変形を伴う拘束性換気障害が進行し呼吸不全に陥ったが、集学的な治療の見直しにより胸郭変形が改善し呼吸器症状も長期的に安定した症例を経験した。胸郭変形は拘束性換気障害を助長するため、病状が安定していても積極的な予防的介入が必要である。

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