「白い木材」の創出と階層構造評価

書誌事項

タイトル別名
  • Development of “Colorless Wood Block” and Its Natural Hierarchical Structure
  • 「 シロイ モクザイ 」 ノ ソウシュツ ト カイソウ コウゾウ ヒョウカ

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説明

<p>題目にある「白い木材」とは樹木が形成した階層構造を維持しながら,選択的にリグニンを取り除いた木材を意味している。したがって,同じセルロース材料でも植物の組織・細胞構造が解消されたパルプとは大きく異なる。</p><p>紙の原料であるパルプは木材を含めた植物資源を化学的あるいは機械的な処理によって単繊維化したものであり,近年ではパルプをさらに解繊したナノファイバーへの期待が高まっている。しかし,パルプ繊維にしてもナノファイバーにしても一旦分散すると構造制御が難しく,例えば植物組織のようにこれらを再配向させることは非常に困難である。そこで,本研究では新たな基盤材料の構築を目指すため,巨大な体躯を支持し1,000年以上もの寿命を保障している樹木の階層構造を維持しながら,リグニンを選択的に除去した木材,つまり「白い木材」の創出に取り組んだ。</p><p>調製法を確立するため様々な処理条件を試験し,迅速・簡便且つ多成分分析が可能である赤外分光分析を駆使してモニタリングしたところ,アルコリシスと亜塩素酸ソーダの繰り返し処理によって木材を完全に白色化できることを見出した。次に木材の組織・細胞からセルロースミクロフィブリルにまで至る階層構造評価を実施した。様々な解析装置を駆使して観察したところ,「白い木材」には際立った破壊や構造的な乱れがほとんど認められず,マクロからミクロにまで至る天然の3次元構造が維持されていることが示された。</p><p>リグニンは多糖間だけでなく細胞間の接着を担っているため,その溶脱は木材組織の解体を意味する。したがって,「白い木材」の創出とは不合理な課題設定ではあるが地道な処理条件の最適化によって達成できることを紹介する。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 74 (11), 1071-1075, 2020

    紙パルプ技術協会

参考文献 (4)*注記

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