西アフリカにおける漁民の自立化策再考

書誌事項

タイトル別名
  • Reconsideration on Measures for the Promotion of Small-scale Fishers Self-reliance in West Africa
  • 西アフリカにおける漁民の自立化策再考--セネガルの沿岸漁村における漁民魚商人の事例から
  • ニシアフリカ ニ オケル ギョミン ノ ジリツカサク サイコウ セネガル ノ エンガン ギョソン ニ オケル ギョミン サカナ ショウニン ノ ジレイ カラ
  • In the Case of <i>Pecheur Mareyeur</i> Observed at Fishing Villages in Senegal
  • セネガルの沿岸漁村における漁民魚商人の事例から

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抄録

<p>零細漁業は経営規模が小さく,漁業活動が漁家単位で行われるため,漁民の組織化は常に困難な課題となってきた。漁民と魚商人のつながりが基本的な社会関係であることが多い漁村において,零細漁民の自立を図るため,魚商人との関係を排除して,協同組合のもとに漁民を組織化する方策には,可能性と同時に,常にリスクがともなう。魚商人と協同組合の活動が往々にして競合するからである。</p><p>本稿は,これまで魚商人の仕込み支配を断ち切り,零細漁民の自立を達成する,ほとんど唯一の方策とさえ考えられてきた漁民の組織化戦略を再考し,それを相対化する試みである。個々の漁民を組織化することで商人資本に対抗する従来型の零細漁民の自立化振興策のオルタナティブとして,漁業生産者が漁家単位で商業資本に対抗することの可能性について,西アフリカに位置するセネガルの沿岸漁村を事例に検討する。</p><p>セネガルの沿岸漁村では有効な漁民の組織化策がみいだせないなかで,魚商人による零細漁民の囲い込みが進行している。そのなかで,漁民魚商人(pecheur mareyeur)と呼ばれる漁家の利益代表が存在する村がある。彼らは,自家や親戚,友人の漁家が運用する漁船の漁獲物を取りまとめ,クォータを持つ魚商人を介して水産物輸出会社へ販売することで手数料収入を得る人びとである。彼らは複数漁船の漁獲物販売権を保持し,魚商人に負債を持たない独立漁家の利益代表として,大家族漁家の紐帯を維持する原動力となり,魚商人による漁民の囲い込みを防ぐ防波堤の役割を果たしている。</p><p>零細漁民の自立化振興策のオルタナティブとして,漁民魚商人の活動環境を整え,漁民個々の商人化を促進する方策は,特定漁村で従来から活動する魚商人を排除することなく,従って競合関係が発生するリスクを回避しながら,零細漁民の魚価交渉力を高め,漁業生産者と商業資本家との間に生まれやすい富の偏在を平準化する手法として可能性を秘めている。</p>

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