研究開発型ベンチャー企業の産業クラスターとモノ作りと新製品開発拠点の集積の論理の違い
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- 吉川 智教
- 横浜市立大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Industrial Clustering for R&D Based start up firms
- -Limits of Professor Marshal and Porter's Industrial Clustering-
- ―マーシャルとポーターの産業集積論の限界―
抄録
「特定産業が特定地域に集積」する現象をはじめて注目したのが経済学者のアルフレド・マーシャルである。このような「特定産業が特定地域に集積する」現象は、原材料、技術、知識、資本等の財の移転し難かった18、19世紀だけではなく、実は輸送手段や通信が発達した現在においても、特定地域に特定産業の集積が見られる。議論の出発点で、製品開発と製造との分業が企業間及び地域間でも起きていることを確認する。次に、「モノ作りのための地域集積」と「製品・技術開発のための地域集積」の両者のメカニズムの違いを分析する。そのメカニズムの違いが明確になれば、シリコン・バレーのような地域集積のケースと最近のモノ作りで見られる世界最適調達のような地域分散化現象にたいして統合的な理解が可能となる。はじめに、マーシャルやポーターの議論では、現在観察されている製品開発に関する地域集積の要因が分析できないことを示し、彼らの分析枠組みには限界があることを指摘する。「製品・技術開発のための地域集積」の論理の解明には、新しい分析フレームワークが必要なことを指摘する。そこで本研究では、新製品開発のプロセスの特徴を確認し、シリコン・バレーの二つのケースを取り上げる。このケースを通じて、a)新製品開発が、プロセスごと企業間に分業していること、b)プロセスごと製品開発者間で製品開発がInteractiveであること、c)スピードのある製品開発が必要なこと、d)製品の量産と製品開発の地理的に分離していること、という四つの現象を観察する。以上のことから、新製品開発や研究開発に、もしも1)スピードのある製品開発と2)Interactiveな製品開発のプロセス、の二条件が必要なときには、研究開発型ベンチャー企業の集積が起こることを示す。この二つのうち一つの条件でもかけると、集積のための十分条件にはならない、という結論を導びく。
収録刊行物
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- 日本ベンチャー学会誌
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日本ベンチャー学会誌 2 (0), 41-56, 2001-08-31
日本ベンチャー学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1391412326424895360
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- NII論文ID
- 130007939324
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- ISSN
- 24338338
- 18834949
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可