エタノール水溶液を用いて前処理した乳清タンパク質のゲル形成機構—その超音波特性とタンパク質高次構造変化—

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タイトル別名
  • Mechanism for Formation of Heat-induced Milk Whey Protein Gel with Pre-treatment using Aqueous Ethanol: The Ultrasonic Properties and Protein Secondary Structure
  • エタノール水溶液を用いて前処理した乳清タンパク質のゲル形成機構 : その超音波特性とタンパク質高次構造変化
  • エタノール スイヨウエキ オ モチイテ マエショリ シタ ニュウセイ タンパクシツ ノ ゲル ケイセイ キコウ : ソノ チョウオンパ トクセイ ト タンパクシツ コウジ コウゾウ ヘンカ

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抄録

<p>市販WPの加熱誘導ゲル形成性に及ぼすEt-OH前処理の効果を超音波分光分析,タンパク質の表面疎水性評価,動的粘弾性測定およびタンパク質二次構造解析を通して明らかにした.WPを異なる濃度(10%, 25%, および50%)のEt-OHを用いて前処理後,溶媒を除去したタンパク質溶液の加熱に伴う超音波速度の変化を調べたところ,ゲル形成の指標となる圧縮率の増加量,およびゲルネットワーク中へのタンパク質分子の参画度(寄与の程度)が反映される超音波減衰の周波数依存性が10% Et-OH前処理WPで顕著に大きかった.次に,タンパク質溶液の表面疎水性度を調べたところ,Et-OH濃度の上昇に伴い,タンパク質の表面疎水性が増大していることが観察された.FT-IR分析を用いたタンパク質二次構造解析から,未処理WPでは変性温度以下(60℃)の温和な熱処理により,その主要成分である β-LGのモノマー化(初期変性)が進行していたにもかかわらず,10% Et-OH前処理WPは未処理のそれよりもなお,天然状態(ダイマー状態)を保持していた.前処理による変性の程度が比較的小さいWPが最終的には,ネットワーク中に取り込まれやすく,結果的により強固な構造を有した加熱誘導ゲルを創出することが示唆された.</p><p>以上のように,10% Et-OH前処理がWPのゲル化に及ぼした影響は未処理および25% Et-OH前処理とは異なるユニークなものであった(Table 2).即ち,未処理に比べ僅かに大きく膨張した可溶性凝集体(a)がより緻密に集合し,未処理および25% Et-OH前処理に比べ,よりコンパクトに圧縮された系(b)が構築され,そのゲル中でより多くのタンパク質がゲル形成に関与していた(c).また,動的弾性率の温度依存性から観察された相転移(d)は,その開始から終了までには幅があったが,3種類の試料間では10% Et-OH前処理試料が最もシャープな転移が生じていると考察された.この現象は上記(b)において,10% Et-OH前処理試料の超音波速度の減少が,よりスティーパーであったことと関連しているものと示唆される(Table 2).</p><p>以上のことから,WPに対する希薄なEt-OH前処理は,その濃度により様々な物性発現を誘導することができる高い可能性をもつ食品加工手段であることが示唆された.</p>

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参考文献 (25)*注記

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