インドネシアにおける漁業のコンフリクト構造

  • スアデイ
    United Graduate School of Agriculture, Tokyo University of Agriculture & Technology

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  • The Anatomy of Conflict in Indonesian Marine Fisheries

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抄録

<p>本稿は,1970年代以降のインドネシアにおける漁業のコンフリクト(主体間の対立)とコンフリクト管理の流れについて論じるものである。本研究では主に文献調査と,中央ジャワ州に位置するチラチャップ南海岸における漁業の事例調査で収集されたデータが用いられた。1970年代初頭のトロール漁の導入を通した近代化プログラムは激しいコンフリクトを引き起こした。このようなコンフリクトの結果政府は政策見直しを迫られ,1980年代から今日までトロール漁を禁止する政策が打ち立てられた。しかし,法執行の欠如と近代化プログラムの推進によりトロール漁禁止政策は短命で終わることとなった。1990年代以降は,複合的な要因により多様な形態のコンフリクトが生じるようになっている。</p><p>チラチャップにおける事例調査により,漁業のコンフリクトは大きく以下の三つの形態に分類できることが明らかになった。一つ目は,漁具や,漁業資源へのアクセスの不平等,移住などに関する直接的な主体間のコンフリクトである。二つ目は,バイヤーによる魚価操作の疑いや,漁業組織の代表者たちの自己宣伝の問題,漁業開発政策などに関する仲介的な主体間のコンフリクトである。三つ目は,航海や汚染などに関する間接的な主体間のコンフリクトである。これらのコンフリクトの主要な要因としては,漁業資源の減少や海洋生態系の悪化,漁船数の継続的な増加,海洋空間の許容量を超えた過当な競争や,法執行の欠如などが挙げられる。問題の根本的原因が複雑であるため,技術的,あるいは強制的なアプローチによる漁業管理だけでは十分ではなく,資源を利用している多様な主体やコミュニティーの社会的構造を考慮する必要がある。</p>

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