漁船乗組員の乗船生活史検討の試み

書誌事項

タイトル別名
  • The Trial of Boarding Life History Examination of a Fishing Boat Crew
  • 漁船乗組員の乗船生活史検討の試み--あるカツオ一本釣り漁業者の事例から
  • ギョセン ノリクミイン ノ ジョウセン セイカツシ ケントウ ノ ココロミ アル カツオ イッポンズリ ギョギョウシャ ノ ジレイ カラ
  • The Case of Coastal Skipjack Pole and Line Fishing Boat Crew
  • あるカツオ一本釣り漁業者の事例から

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抄録

<p>この論文は近海カツオ一本釣り漁船に幹部乗組員として乗り組んだ漁業者の生活史に関するものである。その生活史は調査対象とした漁民についての乗船歴に関する問題に限られる。</p><p>調査地は,高知県中土佐町久礼である。久礼はかつて近海カツオ一本釣り漁船の基地として知られ,その漁船群は久礼船団として有名であった。被調査者はその久礼に在住する漁業者である。彼はカツオ一本釣り漁船を経営する家に生まれた。そして,水産高校卒業後,自分の家の漁船に幹部乗組員として乗船し続けた。調査の方法は直接面接による聞き取りと,船員手帳の分析に基づいた。</p><p>この論文のなかで明らかにした点はつぎのとおりである。</p><p>まず,被調査者の親は被調査者を高校へ進学させたが,当時,漁家からの高校進学は希であった。ここには,自分の子供を自船の幹部乗組員として養成する意図があった。一方,被調査者は,高校進学を足がかりに地元から出ることを意図するが,そこからは漁民らしい移動志向を見て取ることができる。</p><p>つぎに,被調査者の乗り組んでいた漁船は,船長,漁撈長をはじめとする幹部乗組員を,彼の兄弟と近親者で占めている点が明らかになった。彼らはこうした経営形態を家族船と呼ぶ。家族船では,乗組員の間に近親者特有の安心感がある。その一方,近親者特有の遠慮のなさもある。しかし,そうした近親者特有の人間関係が船内の階層と秩序を侵すことはない。</p><p>三点目は,家族船における幹部乗組員の養成に関することである。被調査者は自らが船長から漁撈長に昇格する際,次兄である前任の漁撈長から必要な訓練をうけた。同時に彼は従兄弟である新任の船長の指導を行った。このように,乗組員たちはその職務に応じた職能を航海の中で継承してゆくことがわかった。</p>

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