企業データベースを利用した企業支所立地の動向把握(2009-2019年)

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  • Branch location trends from 2009 to 2019

抄録

<p>1. 背景と目的</p><p></p><p> 広域中心都市をはじめ、情報通信技術の発達で縮小が進むことが指摘されている。ただし、この変化が大きく進んだと考えられる最近10年の変化はいまだ明らかではない。また、全国を分析した既往研究では対象範囲が上場企業に限られており、すべての企業を対象とした既往研究では対象範囲が限られている。本稿は非上場企業も含めた全国的な視点の立地状況を把握し、2009年以降の変化を捕捉することを目指す。</p><p></p><p>2. データ</p><p></p><p> 株式会社帝国データバンクでは、従業員数が100名以上の規模の大きい企業について、事業所のデータベースを構築している。データベース上では、各事業所には目的が最大二つ与えられており、このうち目的が「事務・営業」であるものが支所機能に対応していると考えられる。官公庁を除き、2009年・2019年のいずれにおいても事業所データベースに含まれている企業で、2009年と2019年の少なくともいずれかにおいて本社(一企業一つとして定義された本社。第二本社の場合は支所に含む)以外の目的が「事務・営業」である事業所が搭載されている企業をランダムに2000抽出し、これを対象とする。また、このうち1430社は事業所の従業者数が明らかであり、これも分析対象とする。分析に当たっては同一立地の事業所をひとまとめにする、掲載対象の階層を年次間でそろえるなどの処理を行った。</p><p></p><p>3. 支所数・分布</p><p></p><p> 2000社のうち従業員数500人未満の企業が1167社を占め、上場企業を対象とした場合と比較して上位都市への集中傾向は弱い。10年の間に、442社で支所が増加し、657社で減少、901社は同じ数を保った。全体では2.34%減少しており、都市別に見ても広島など一部の都市を除き減少している。但し、改廃した支所と同じ企業の他拠点(本社または支所)との間の距離の分布を見ると、長距離のものが増えており、情報通信技術が発達した結果、企業全体の事業領域が拡大し、支所数が増えるという経路の影響もあると想定される。</p><p></p><p>4. 従業者数</p><p></p><p> 従業者数に目を転ずると、全体で10.5%の減少であり支所数以上に減少幅が大きい。ただし、大阪では例外的に増加しており、これには新設支所の寄与が大きい。</p><p></p><p>5. 結論</p><p> 本分析の貢献は以下のとおりである。第一に、非上場企業を含めた支所の集積に着目することで、網羅的な分析が可能になった。第二に、支所数は減少傾向にあるが、近隣店舗の統廃合が顕著に進む一方で各企業の事業領域が拡大し遠方の支所が開設されることでその傾向は弱められていることを示した。第三に、支所の従業者数は支所数よりも減少率が高いことを明らかにした。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1391693801403746432
  • NII論文ID
    130007949239
  • DOI
    10.14866/ajg.2020a.0_161
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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