高齢者頭部外傷におけるtalk and deteriorateのリアル

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タイトル別名
  • An overview of post–traumatic coagulopathy in elderly patients with traumatic brain injury who suffer from “talk and deteriorate”
  • コウレイシャ トウブ ガイショウ ニ オケル talk and deteriorate ノ リアル

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抄録

<p> 高齢者重症頭部外傷では受傷48時間後以降の死亡率が高く,その原因としてtalk and deteriorate(T&D)など遅発性悪化が重要とされる.今回我々は,高齢者頭部外傷におけるT&Dと凝固障害の関連等について検討したので報告する.対象は当科入院加療を行った65歳以上の頭蓋内病変を伴う頭部外傷急性期270例(M:F=154:119,79.0±8.3歳).T&D群(n=94)と非T&D群(n=176)に分け,年齢,性別,受傷機転,頭蓋内病変,Deteriorate前凝固指標・血液・生化学所見,転帰等について後方視的に比較検討した.また,受傷前抗血栓薬内服群(n=126)と非内服群(n=144)との間でT&D発生率を比較検討した.年齢,性差,受傷機転,頭蓋内病変は2群間に差を認めなかった.D‒dimerはT&D群70.0±86.2μg/mL,非T&D群28.2±50.4μg/mLで,T&D群で有意に高値だった.PT‒INRはT&D群1.39±0.90,非T&D群1.04±0.22,APTTはT&D群32.0±9.4秒,非T&D群29.3±5.9秒で,T&D群で延長していた.血小板数はT&D群16.6±6.5×104/μL,非T&D群19.5±6.5×104/μLで,T&D群で有意に少なく,血清NaはT&D群138.6±5.0 mEq/L,非T&D群140.0±4.2 mEq/Lで,T&D群で有意に低値であった.また,抗血栓薬内服群は非内服群と比較してT&Dは有意に高率に発生した.T&Dの要因となった主たる頭蓋内病態は,頭蓋内血腫の増大によるものが最も多かったものの,脳浮腫,てんかん,脳梗塞,水頭症など多岐に渡っていた.転帰はT&D群ではGR 13.0%,MD 15.2%,SD 28.3%,VS 4.3%,D 39.1%,非T&D群ではGR 77.3%,MD 10.2%,SD 9.7%,VS 1.7%,D 1.1%で,T&D群で有意に転帰不良であった.高齢者頭部外傷におけるT&Dの原因の一つとして,凝固線溶系障害や受傷前抗血栓療法が関与している可能性が示唆されると同時に,T&Dの要因は多岐に渡ることも判明した.T&D制御のアルゴリズムを確立することが喫緊の課題と考えられた.</p>

収録刊行物

  • NEUROSURGICAL EMERGENCY

    NEUROSURGICAL EMERGENCY 25 (2), 187-194, 2020

    特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency

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