術前スクリーニングで偶然発見された先天性プレカリクレイン欠乏症の1症例

  • 菅﨑 幹樹
    国立大学法人徳島大学病院医療技術部臨床検査技術部門
  • 徳永 尚樹
    国立大学法人徳島大学病院医療技術部臨床検査技術部門
  • 池亀 彰茂
    国立大学法人徳島大学病院医療技術部臨床検査技術部門
  • 中尾 隆之
    国立大学法人徳島大学病院医療技術部臨床検査技術部門
  • 大浦 雅博
    国立大学法人徳島大学病院血液内科
  • 三木 浩和
    国立大学法人徳島大学病院輸血細胞治療部
  • 長井 幸二郎
    国立大学法人徳島大学病院検査部
  • 高山 哲治
    国立大学法人徳島大学病院検査部

書誌事項

タイトル別名
  • A case of congenital prekallikrein deficiency discovered by preoperative screening
  • ジュツゼン スクリーニング デ グウゼン ハッケン サレタ センテンセイ プレカリクレイン ケツボウショウ ノ 1 ショウレイ

この論文をさがす

抄録

<p>プレカリクレイン(prekallikrein; PK)は肝臓で合成されるセリンプロテアーゼの一種であり,内因系凝固反応,血管拡張,線溶促進などに関与する分子である。先天性PK欠乏症は出血症状などの臨床症状に乏しく,偶然発見されるケースも少なくない。今回当院において先天性PK欠乏症と思われる症例を経験した。患者は50代の男性。前立腺癌の手術のため当院を受診し,スクリーニング検査で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)178.7秒と著明な延長を認めた。患者には出血症状を認めず,出血傾向のある血縁者も認めなかった。APTT延長の原因検索のため,クロスミキシングテストを実施し,因子欠乏パターンを得たが,内因系凝固因子はすべて正常であった。そこで,接触因子であるPKおよび高分子キニノゲン(HMWK)の活性を凝固一段法にて測定したところPKが1.5%,HMWKが74.5%とPK活性の著明な低下を認め,本患者は先天性PK欠乏症と診断された。遺伝子解析では,exon 5,exon 9,exon 14の3カ所にヘテロ接合体のミスセンス変異を認めた。この変異のPK活性への影響についてはこれまでに報告がなく,不明である。今回の経験から,原因の特定できないAPTT延長では,本疾患も考えられ注意が必要であると感じた。また,クロスミキシングテストのパターンは非常に特徴的であり,診断に有用であった。</p>

収録刊行物

  • 医学検査

    医学検査 70 (1), 132-137, 2021-01-25

    一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ