北欧エストニアで 1422 年より現存するタリン市会館薬局--598年の歴史--

  • 奥田 潤
    日本薬史学会名誉会員 名城大学薬学部名誉教授
  • 川村 和美
    株式会社ジョヴィ,ファーマシイプロモーター
  • 大澤 匡弘
    名古屋市立大学大学院薬学研究科神経薬理学分野

書誌事項

タイトル別名
  • From the Year 1422, Town Hall Pharmacy Still Working in Tallinn (Estonia) --The 598-Year History--
  • ホクオウ エストニア デ 1422ネン ヨリ ゲンソン スル タリンシ カイカン ヤッキョク : 598ネン ノ レキシ

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抄録

目的:北欧エストニア国の首都タリンに,1422 年から現在まで,同一場所で 598 年間営業を続けている薬局がある.改修されているが,ヨーロッパでもっとも古いといわれる薬局でその名は「町(市)会館薬局」と呼ばれる.そこで本薬局の長期営業の歴史と理由を調べた. 方法:2018 年,Aarne Ruben 著「The Story of Town Hall Pharmacy」が出版された.2019 年,本論文の著者,川村・大澤が同薬局を訪問し,この英文の歴史書を入手し,写真を撮影した.奥田は,同書を要訳して本論文を作成した. 結果:同薬局が 598 年間継続した理由として次の 4 項目があげられる.1.本薬局の所有権は町(市)会館と薬剤師がもつ.2.半官半民の本薬局は,タリン市中心広場の東北角に位置し,顧客が得られやすく,市民から安心感と信用を得た.3.1583 年から 1911 年までの 328 年間は,ドイツ人 Burchart 家が 10 代にわたって本薬局を経営した.4.本薬局の歴代薬剤師と短期間代理を務めた医師が,人類愛の心をもち,ペスト流行時でも薬局から離れず,そのため市民から薬局が支持され続けた. 結論:半官半民の薬局の経営方法と 328 年に及ぶ Burchart 家の貢献と歴代薬剤師の愛情と責任感が,598 年にわたる本薬局の運営を可能にしたといえる.

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