認知症予防・治療の未来戦略―2020―

  • 里 直行
    国立長寿医療研究センター・認知症先進医療開発センター・分子基盤研究部 大阪大学医学系研究科連携大学院・加齢神経医学

書誌事項

タイトル別名
  • The future of dementia prevention and treatment strategies
  • ニンチショウ ヨボウ ・ チリョウ ノ ミライ センリャク : 2020

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抄録

<p>超高齢化が進む現代社会において「認知症疾患修飾薬の創薬」は未達成の課題である.本稿では2020年における現状を可能な限り客観的かつ網羅的に把握することによって,認知症の中でも症例の多いアルツハイマー病(AD)に主眼をおいて未来への解決戦略の創出を試みた.Alois Alzheimerによって老人斑・神経原線維変化・神経細胞死という病理学的特徴を持つ最初の認知症患者が報告され,家族性AD家系においてAmyloid Precursor Proteinの遺伝子変異が見つかったことから,アミロイド仮説が提唱された.今日までこのアミロイド仮説に則って抗βアミロイド抗体療法,BACE1阻害薬,γセクレターゼ修飾薬が,一方,アミロイド仮説が正しくない場合でも通用する治療法として,抗タウ療法,抗炎症薬,APOE標的治療薬,その他の新規治療薬が開発途上である.このような認知症治療薬開発の現状を踏まえ,これから我々が取り組むべき未来戦略を考察した.まず認知症病態のより深い理解が必要であること,次に認知症治療薬開発にはより理想的なモデル動物の作製が必要なこと,最後にヒトに対する新規治療法開発においての方策について述べた.「疾患修飾薬」はまだ手にしていないものの着実に一歩一歩進んでいることを確認した.「認知症の創薬」実現に向けてまだいくつかの壁を乗り越えて行く必要があるが「有効性」と「安全性」のバランスが鍵となる.また「疾患修飾薬の開発」や「マルチドメイン介入法」に加え,認知症の患者とその家族に「やすらぎ」を届ける方法の開発も重要であると考える.</p>

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