将来のわが国における被害者及び証人の保護制度に関する一考察 : アメリカ合衆国の証人保護プログラムを参考に

書誌事項

タイトル別名
  • A Study on the Future Protection System for Victims and Witnesses in Japan
  • ショウライ ノ ワガクニ ニ オケル ヒガイシャ オヨビ ショウニン ノ ホゴ セイド ニ カンスル イチ コウサツ : アメリカ ガッシュウコク ノ ショウニン ホゴ プログラム オ サンコウ ニ

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説明

わが国では,令和5年法律第28号によって刑事訴訟法が改正され,被疑者や被告人に対して逮捕状や起訴状等を呈示・送達する際に被害者の「氏名及び住所その他の個人を特定させることとなる」「個人特定事項」(新設される201条の2第1項参照)を記載しない抄本を利用するという特例が認められることになった。その一方で,以前から議論の対象とされているのが平成28年法律第54号附則9条3項にいう「証人等の刑事手続外における保護に係る措置」である。同年の刑事訴訟法改正について議論していた法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会では,いわゆる証人保護プログラムの必要性については特段の異論は示されなかったということである。ここで念頭に置かれているのはアメリカ合衆国等で採用されている証人保護プログラム(Witness Security Program)のことであると考えられるが,その後,わが国においては必ずしも十分な議論は行われていないようにみられる。しかし,議論を行う必要性自体が低下したとは思われない。  本稿は,主に合衆国のプログラムを参考にして,将来,わが国で議論を行うとした場合の課題・注意事項について検討したものである(もっとも,具体的なものではなく,総論的な内容に留まる)。すなわち,①どのような被害者・証人を制度の対象とするのか,②保護を実施する目的との関係等について検討してみた。そして,最後に,そもそもこうした制度が必要となるような状況にならないことが望まれるが,もし必要となった場合には,民事・行政を含む様々な制度との調整が不可欠で,一朝一夕には実現できない制度であることは明らかであることから,時間的な余裕のある今の段階から慎重に検討することを開始すべきではないかと指摘した。

収録刊行物

  • 比較法雑誌

    比較法雑誌 57 (4), 107-138, 2024-03-30

    日本比較法研究所

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