身長と食料消費 : 個人的観察を中心に

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タイトル別名
  • Height of Children, Primarily based on Personal Observations
  • シンチョウ ト ショクリョウ ショウヒ : コジンテキ カンサツ オ チュウシン ニ

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抄録

戦後日本経済は10年で「もはや戦後ではなくなり」,40年間直線状の発展を遂げた。韓国は「朝鮮戦争」(1950-53)で国土が壊廃し,経済発展は20年近く遅れたが,日本が経験した「バブル崩壊」は免れ,2010年代には日本に劣らぬ生活水準に到達した。本稿の中心課題である食料消費の質的状態は,動物蛋白に関する限り,全く同じ水準に到達した。子供たち(未成年,本稿では高校3年生男子)の身長の伸びは目覚ましく,日本は1990年代初めまでに10cm弱高くなった。韓国は1990年代半に,国民の1人当たり動物蛋白の摂取はなお30%低かったが,背丈では日本に追いつき,活発な身長増進は続き,2000年代半に日本の児童より3.0cm強(高3男子)高くなって,そこで身長の伸びはストップした。韓国ではその後も動物蛋白の摂取増加は続くが,児童の平均身長の更なる増加は伴っていない。日本と韓国の間には,平均身長に関し遺伝子的にその程度の差が存在するとみる人は,人類学者の中に存在する。筆者は両国の家計調査の世帯主年齢階級別データから,児童を含む世帯員年齢階級別平均消費量を析出し,日本で1980年代末期に児童の更なる身長の増進が止まったのは,1970年代後期に始まった「若者の果物離れ」,韓国で活発な経済成長が続いていた2000年代半で児童の身長の増進がストップしたのは,1980年代後期ころから始まった,構造的「若者の野菜≒キムチ離れ」に一因が在るのであるまいかと考える。果物/野菜を食べれば背が高くなるのではなく,「動物蛋白の増加だけでは,必須栄養の消費が不十分であれば,身長の増加を結果しない」(Blum)の見解に同感する。

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