魅せられる者たちの交わり : 三島由紀夫『黒蜥蜴』論

書誌事項

タイトル別名
  • Fellowship of the Enchanted People: An Essay on Mishima Yukio's Kurotokage (Black Lizard)
  • ミセラレル モノ タチ ノ マジワリ : ミシマ ユキオ 『 クロ トカゲ 』 ロン

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抄録

『黒蜥蜴』は江戸川乱歩の同名小説を三島由紀夫が戯曲に翻案した作品である。初演時から娯楽性の高い劇として扱われてきたが、内容は単に乱歩作品の翻案であるにとどまらず、三島文学としての個性が盛り込まれている。それは主要人物の黒蜥蜴と明智小五郎がいずれも何者かに「魅せられる」存在として位置づけられていることで、それによって敵同士である黒蜥蜴と明智が相互に魅了されていく展開が原作よりも明瞭に浮かび上がっている。また表層的な特徴として挙げられる、初演時においてもいささか時代遅れ的な趣向であった、変装や身代わりを活用する舞台作りは、当時流行していた松本清張らの社会派のサスペンスに対するアンチテーゼでもあり、大時代なロマン主義をあえて舞台上で実現しようとするところにも、三島の自己主張がなされている。

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