子宮体癌の組織学的予後判定因子についての検討

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  • An Analysis on Prognostic Significance of Histopathologic Risk Factors in Uterine Endometrial Carcinoma

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抄録

過去10年間に北海道大学産婦人科において手術治療を行った子宮体癌113例について, 核異型度 (G1, G2, G3), 脈管侵襲 (軽度, 高度), 組織分化度 (G1, G2, G3), ならびに組織型 (adenocarcinoma又はadenoacanthomaのA群と, それ以外のB群) の予後判定因子としての有用性について検討を行い以下の結果を得た。1) Kaplan-Meier法による生存率検定では核異型度 (p<0.005), 脈管侵襲 (p<0.005), 組織分化度 (p<0.01) および組織型 (p<0.01) はそれぞれ予後と有意の関連を認めた。2) 進行期分類 (FIGO, 1989) のII期, III期症例について同様の検討を行ったところ, 核異型度 (p<0.05), 脈管侵襲 (p<0.0001), また組織型 (p<0.05) はそれぞれ予後に有意の関連を認めた。一方組織分化度は, G1とG3でのみ予後と有意 (p<0.05) の関連を認めた。3) 核異型度, 脈管侵襲, 組織分化度, 組織型の4因子についてのCoxの比例ハザードモデルを用いた重回帰分析による検討では, 予後との関連が認められたのは核異型度, 脈管侵襲のみで, ハザード比 (95%信頼区間) は, 核異型度 (G1とG3) が19.2 (3.2~115.7), 脈管侵襲 (軽度と高度) が16.9 (2.1~135.3) であった。4) 核異型度と脈管侵襲を変数として作成したCoxのハザードモデルにおいてハザード比ごとの3年生存率は, ハザード比16.8以下では98% (47/48), ハザード比67.4以上では45% (5/11) と有意差 (p<0.0001) を認め, ハザード比ごとの累積生存率の検討でも有意差 (p<0.01) が示された。以上より脈管侵襲, 核異型度は子宮体癌の予後判定に有用であり, 比較的予後の不良な進行期分類 (FIGO, 1989) のII期, III期症例においても有用であることが示唆された。また, Coxの比例ハザードモデルより導かれた式により個への患者の相対リスクを定量化することは, 術後治療の個別化の意味からも有用であると考えられた。

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