子宮内膜症におけるダグラス窩閉塞の病態と腹腔鏡下手術を用いた治療ストラテジーに関する検討(子宮内膜症の治療ストラテジー)
-
- 武内,裕之
- 順天堂大学医学部産婦人科
書誌事項
- タイトル別名
-
- Pathology of Complete Cul De Sac Obliteration in Endometriosis and the Treatment Strategy Based on Laparoscopic Operation
この論文をさがす
説明
子宮内膜症は,腹膜病変,卵巣病変,ダグラス窩病変の3つの病態に大きく分類される.この中で最も病態の解明が遅れているのがダグラス窩病変であり,臨床的にはダグラス窩閉塞(complete cul de sac obliteration : CCDSO)として認識される.CCDSOは意外に発生頻度の高い疾患であり,当教室で施行した腹腔鏡下手術2,464例中子宮内股症は1,063例(43%)に認められ,うち304例(29%)にCCDSOが確認された.1995~2002年まで当教室で施行した腹腔鏡下CCDSO開放術は144例であり,尿管損傷や直腸損傷などの周術期合併症は14例(9.2%)に認められたが,すべて腹腔鏡下に対処することが可能であった.術後月経困難,性交痛や排便痛などの疼痛は著明に改善し,55例中13例(23.6%)に自然妊娠が成立した.卵巣チョコレート嚢胞に合併するCCDSOを開放術が行われた35例と卵巣チョコレート嚢胞摘出術のみを施行し開放術を行わなかった35例に分類して検討すると,術後妊娠率,術前の月経困難の程度には差が認められなかったが,術後の月経困難は非開放群に比べ,開放群で有意に低かった(p<0.01).SLLは61例に施行され,術後のr-AFS,左右付属器の癒着スコアは何れも術前よりも有意に(p<0.01)低下した.SLL施行時にダグラス窩の再癒着は26例(42.6%)に認められたが,癒着が認められなかった35例と比較して術後の疼痛に有意差はなく,再癒着の要因はダグラス窩内膜症の再発ではなく,単なる術後癒着であると思われた.当科で開発したMRIゼリー法により,CCDSOは術中所見とほぼ同様の3つのタイプに分類され,客観的で再現性の高い検査であることが示された.摘出した深部病変の組織学検討では,endometriotic fociの周囲には線維化と平滑筋化生が認められ,腹膜移植片から発生したendometriotic foci周囲の線維化によりCCDSOが生じ,さらにその周囲の平滑筋化生により深部病変が形成される発生機序が推定された.
収録刊行物
-
- 日本産科婦人科學會雜誌
-
日本産科婦人科學會雜誌 55 (8), 903-914, 2003-08-01
日本産科婦人科学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1540009770384765440
-
- NII論文ID
- 110002100198
-
- NII書誌ID
- AN00190060
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- NDLデジコレ(旧NII-ELS)
- CiNii Articles