現代ロシア正教会における典礼言語を巡る問題 : 多様性の可能性を求めて

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  • О ДИСКУССИИ ПО БОГОСЛУЖЕБНОМУ ЯЗЫКУ В РУССКОЙ ПРАВОСЛАВНОЙ ЦЕРКВИ СЕГОДНЯ : ВОЗМОЖНОСТИ МНОГООБРАЗИЯ

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抄録

典礼にいかなる言語を用いるかは、今日様々な伝統的宗教・宗派が直面する問題であり、宗教において極めて基本的な活動である典礼を通じて社会とどのような関係を持っているかを考察する一つの指針ともなりうると思われる。本論はロシア正教会における典礼言語を巡る議論の経緯と、そこに特徴的な言語文化を考察しようとするものである。ロシア正教会では、スラヴ民族への布教目的に形成された教会スラヴ語を典礼に用いてきたが、19世紀以降「一般信徒への分かりにくさ」を理由に「典礼言語のロシア語化」の問題が何度も議論の俎上に上ってきた。ペレストロイカ以降、教会復興の趨勢の中でロシア語訳とその実践を試みた司祭が活動を禁止されるという出来事は、「聖なる」教会スラヴ語の伝統を擁護する立場と、宣教目的の「世俗的」ロシア語化推進という対立を激化させた。この対立構造は19世紀末以来大きく変化していないものの、前者による伝統の保守と、後者による宣教の推進という2つの要素が対立しながらも同時に求められる教会の現状を特徴的に表している。近年ではインターネットという今日的なメディア上でロシア語訳が公開されたり、一般市民による議論への参加などの新たな展開も見られる。また、ベラルーシでも典礼書の民族語への翻訳や、教会での民族語の使用の是非が議論されるなど、ロシア正教会における典礼言語を巡る問題は極めて焦眉であり、今後の展開が注目される。

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