体外受精・胚移植のための超音波採卵の総合的評価 : 経腹および経腟採卵の比較検討から

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  • The Evaluation of Ultrasonic Oocyte Collection Techniques for IVF-ET : Comparing the Transabdominal and Transvaginal Methods

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抄録

体外受精・胚移植 (IVF-ET) のための超音波採卵の普遍的有用性を検討するため, 昭和61年7月より昭和62年12月までの期間に当科においてIVF-ETのために超音波採卵を実施した51症例, 145周期を, 採卵法別に経腹採卵 (TA) と経腟採卵 (TV) に分け, それぞれの採卵成績, IVF-ET成績, 合併症などについて検討を加えた。採卵成績では, 対周期当りの採卵率はTAで91.9% (57/62), TVで96.4% (80/83) と両採卵法とも極めて良好な成績であったが, 対穿刺卵胞当りの採卵率はTAで68.7% (136/198), TVで77.1% (222/288) と有意にTVにおいて良好な成績となった。しかし, いずれの値もほぼ満足できる結果であった。実際に卵胞液中に卵が確認される割合も, TAで56.8% (67/118), TVで68.8% (137/199) とTVで有意に高値を示し, 採卵率の良好さと合わせてTVの簡便さを示す結果となったが, 卵胞flushing 4回目, 5回目でも, いずれの採卵法によっても卵が確認されており, 入念な卵胞flushingの必要性が示唆された。受精率は対象症例全体では, TA, TV共に, ほぼ同様の値で有意差を認めなかったが, 卵管不妊および子宮内膜症のみの対象群では, TAで81.1% (43/53), TVで65.6% (59/90) とTAにおいて有意に高値を示した。分割率には一定の傾向は認めなかったが, 得られた妊娠例はTAで4例, TVで2例の合計6例で, TVの2例はいずれも腟内洗浄法の変更後得られていることから, TVでは腟内でのcontaminationに充分注意する必要があると考えられた。両採卵法共に, 術中術後の合併症の頻度は低く, また重篤なものは認められず, 安全性は高いと考えられる。以上の結果から, 両採卵法共にそれぞれに注意を要する点は存在するものの, 適切な選択により慎重に実施されるならばIVF-ETやGIFTのための極めて有効な採卵法となり, その普遍的有用性が確認された。

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