ヒト卵巣表面上皮細胞の初代培養と性状解析
書誌事項
- タイトル別名
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- Primary Culture and Characterization of Human Ovarian Surface Epithelial Cells
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説明
In vitroにおいて上皮性卵巣腫瘍の発生に関する研究を行う糸口として, ヒト卵巣表面上皮細胞を初代培養し, その性状解析を行った. ヒト卵巣表面上皮細胞は手術時摘出卵巣の表面切片を移植片培養することによって得たものである. この上皮細胞は比較的広い細胞質を持ち敷石状に並ぶ細胞であったが, 培養条件によっては紡錘形を呈するなど形態的にvariationが見られた. 免疫細胞化学的検討では中間径フィラメントのケラチン, ビメンチンともに陽性であり, 中皮細胞としての性格を示した. また, 10%Fetal Calf Serum添加RPMI 1640培地にて培養可能であったが, hEGF 10ng/mlおよびhydrocortisone 0.5μg/mlの添加により, その増殖は強く促進された. 基底膜成分よりなるMatrigelをコートしたスライドグラス上で培養したところ, TPAおよびsodium butyrateの添加により形態変化が認められた. これは従来のガラス上培養では見ることのできない変化であった. 一方, 間質成分であるタイプIコラーゲンのゲル上で培養したところ, 単層に発育する上皮様構造を示した. また, タイプIコラーゲンゲルの上にMatrigelを重層したものの上で培養したところ, 最初, 分散していた細胞はしだいに集合し, ゲル内で樹枝状に配列する像が見られた. DNAの低メチル化剤である5-azacytidineによる処理を繰返しながら6週間にわたって培養を続けたところ, 形態変化をきたした細胞の出現を認めたが, いわゆるmalignant transformationは生じなかった. これらの実験から, 種々の培養条件の設定に対応するヒト卵巣表面上皮細胞の性状の一端を明らかにすることができた.
収録刊行物
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- 日本産科婦人科學會雜誌
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日本産科婦人科學會雜誌 42 (1), 45-52, 1990-01-01
日本産科婦人科学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1540572720334125440
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- NII論文ID
- 110002105446
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- NII書誌ID
- AN00190060
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- NDLデジコレ(旧NII-ELS)
- CiNii Articles