正常妊婦ならびに妊娠中毒症妊婦, IUGR出生妊婦における血小板動態 : 血液レオロジー的観点からの検討

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  • Hemorheological Studies on Platelet Counts and Size in Normal Pregnancy and Pregnanties with Preeclampsia and Intrauterine Growth Retardation

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生理的な血液の希釈が障害された妊婦では, 重症妊娠中毒症や, IUGRの発生頻度が高い. 血液の希釈障害が微小血栓形成におよぼす影響を知るために, 妊娠中の血小板容積(MPV)の推移を血小板消費の指標として, ヘマトクリット値(Ht)との関係において検討した. 正常妊婦のHtは妊娠11週以内で38.27±2.85%に対し, 妊娠12~19週より有意に低下し, 28~31週で最低値(32.71±2.70)となる. 血小板数(P1)は, 妊娠時の変化は認められない. MPVは妊娠11週以内8.29±0.63flに対して, 妊娠経過と共に減少し, 妊娠20~23週より有意の低値となり, 妊娠28~31週で最低値(7.99±0.65)をとるが, 再び増加し妊娠38~41週では8.54±0.93と, 有意の高値をとる. 血小板容積分布幅(PDW)は妊娠11週以内10.39±0.31に対し, 妊娠12~19週より有意に高値を示し, 妊娠経過と共に妊娠末期まで増加する. 重症型妊娠中毒症では, 妊娠28~31, 32~35, 36~37週において, 正常妊婦に比してHtが有意に高値である(36.20±3.02, 35.17±2.67, 35.60±2.96). P1は妊娠38~41週の21.08±5.47×10^4/mm^3のみが, 正常妊婦24.46±4.79に比して低値である. MPVは妊娠28~31, 32~35, 36~37, 38~41週で正常妊婦に比して高値であるが(8.56±1.17,8.79±0.82,9.61±1.00,9.23±0.90), PDWは妊娠全期間正常妊婦と差がない. IUGR出生妊婦では, 妊娠28~31, 32~35週において, 正常妊婦に比しHtが有意に高値である(34.51±3.21, 35.04±2.52). P1とPDWは妊娠全期間, 正常妊婦と差を認めないが, MPV は妊娠38~41週で9.41±0.85と正常妊婦に比して有意に高値である. これらの結果から血液の希釈障害や血小板消費の冗進は, 高血圧発症に先立つて起こると考えられる. 血液の希釈障害により血液粘度は増加し, hemostasisから局所にhypoxiaがもたらされ, 血管内皮細胞が傷害を受け, 血管壁に血小板の粘着や凝集が起こる. これら微小循環障害は, 妊娠中毒症やIUGRの発生の引金として重要と考えられる.

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