5. 応急仮設住宅における居住生活上の問題点 : 平成5年北海道南西沖地震後の奥尻町住民に対するアンケート調査から(その2)

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抄録

このところ、わが国では雲仙普賢岳災害(1991年~)を始め、鹿児島風水害(1993年6~9月)、北海道南西沖地震(1993年7月)と大規模な災害があいついだ。このなかで、表-1に示すように、多数の住家が失われることにより、多くの人々が避難所や応急仮設住宅等での避難生活を余儀なくされた。ところが、こうした避難所の設置や応急仮設住宅の供給などによる「避難空間供給システム」のもつ限界や問題点が、最近の災害のなかで顕在化しつつある。応急仮設住宅で、生活上の様々なトラブルが各地で発生していることなどは、その現れである。私どもの研究室(神戸大学室崎研究室)では、応急仮設住宅の問題点を明らかにするとともに、応急仮設住宅の今後のあり方を探るために、この数年にわたり仮設住宅に関する研究を継続して行っている。具体的には、雲仙、鹿児島あるいは奥尻の仮設住宅の実態調査を実施するとともに、ノースリッジ地震など海外の事例についても資料収集をはかっている。本研究はこうした一連の仮設住宅に関する研究の一部を成すものである。なお、本研究の前半では、仮設住宅の制度的基準についても概観し、応急仮設住宅問題の制度的背景にも言及している。調査では、住宅の規模や構造面の不十分さが、健康被害をももたらしている実態が明らかにされている。仮設ゆえに出来る限り簡素なものにするということは理解できるものの、最低限の生活を保障するという見地からは、健康被害を生み出しているという事実は看過できない。時代の変化、あるいはニーズの変化を踏まえた、応急仮設住宅基準の見直しが必要といえよう。なお、本研究の調査結果は、地域安全学会として実施した、北海道南西沖地震(奥尻地区)における仮設住宅居住者に対するアンケート調査をベースにしている。この調査は、「調査公害」の軽減をはかるとともに、新しい共同研究のあり方を模索する試みとして、多数の研究者の調査をもちより、それを一本化したものである。調査結果や研究内容の是非とともに、こうした調査スタイルの是非についても、真摯な検討がいるものと思われる。単なる寄せ集めになってはいないかと危惧する次第である。

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