老年婦人の子宮留膿症 : 外来統計にみるその特徴

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  • Clinico-statistical Study on Pyometra in High-aged Outpatients

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東京都多摩老人医療センター婦人科外来にて過去4年間に扱った60歳以上の高齢者の子宮留膿症例の臨床的検討を行った。1) 子宮腔内を検索できた353例中48例 (13.6%) に子宮留膿症を認めた。2) 年齢階級別対象例に対する本症例の占める割合は, 60歳代で3.8%, 70歳代で11.8%, 80歳代で19.1%, 90歳以上で33.3%と高齢化するほど有意に高率であった (p<0.01)。3) 子宮悪性腫瘍又は結核性子宮内膜炎の合併のない本症42例中32例 (76.2%) の日常生活動作が車椅子移動又は寝たきりであった。4) 尿・便失禁のある96例中29例 (30.2%) に本症を認め, 非失禁例での本症の発見率 (5.5%) に比し有意に高率であった (p<0.01)。5) 主訴は帯下異常が最も多く25例, 次いで不正性器出血が15例, 無症状4例, 発熱3例などであった。6) 子宮腔内貯溜膿量の最多は400 mlで平均は18.5 mlであった。また悪臭を伴った膿は21例 (43.8%) に認めた。7) 末梢白血球数増多が34.5%に, CRP値異常が70.4%に認められた。8) 子宮腔内膿の細菌培養にて菌株が同定された36例中, 好気性菌のみが18例, 嫌気性菌のみが2例, 両者の混合感染が16例にみられた。好気性菌ではStreptococcus属, 嫌気性菌ではBacteroides属が最も多かった。9) 全例に腟腔の洗浄後頚管拡張, 排膿及び生理食塩水による子宮腔内洗浄を行い, 本症のために抗生剤の全身投与を局所療法開始と同時に行ったのは1例のみであった。これらの治療で不完全治療1例を除き全例軽快した。以上, 高齢者においては日常生活動作の不良と失禁が極めて重要な本症の発症要因であること, 本症において嫌気性菌の関与が大きいこと, 本症により微熱, CRP値の上昇など全身性炎症反応を呈し得ること, 治療上頚管拡張, 排膿及び子宮腔内洗浄が有用であることを報告した。

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