M-O型製品ビジネスにおける組織学習と戦略的柔軟性 : Acer社を事例として

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  • Organizational Learning and Strategic Flexibility in Modular/Open Product Business : A Case Study of Acer

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抄録

1981年にIBM社によるIBM-PC/ATの発表以来、製品アーキテクチャーのM-O化(Modular/Open)という製品設計思想がエレクトロニクス製品業界に浸透し、スマイルカーブ現象を引き起こした。これに直面しているブランドメーカーは、外部製モジュールとEMS/ODMの設計・生産システムなどの外部資源を活用しながら、「選択と集中」戦略を取っている。「外部資源の活用」と「選択と集中」によって補完的な資源を外部企業との連携でまかなうことができ、また、コア・コンピタンスを明確化し意図的に蓄積することも可能である。しかしながら、コア・コンピタンスの蓄積方向がバリューチェーンの川上もしくは川下で明確化されると、ライバル企業もそこに焦点を絞った対応がとりやすくなり、追随企業が相次ぐことになる。つまり、「同質化の競争」の顕著に起こるということであり、「同質化の競争」の激化によって、コア・コンピタンスが生み出した差別化優位を長期的に維持することができなくなる。よってこの問題を解決するために、コア・コンピタンスの進化が求められている。本稿では、ブランドメーカーが「選択と集中」戦略の幅を調整することにあわせてコア・コンピタンスを戦略的に進化させなければならないと考え、「組織学習の促進による戦略的柔軟性の向上」という視点を通じてコア・コンピタンスの進化プロセスを説明することを試みる。近年、ノートパソコン業界で急成長を果たしたAcer社の事例を取り上げてこの課題を検討する。その結果、Acerの事例分析で明らかになったことは以下の二点に集約できる。まず一つは、スマイルカーブに照準をあわせた「高付加価値領域への選択と集中」戦略をとる場合、ブランドメーカーでは体系化されていない市場ニーズの情報を製品コンセプトに転写する学習活動と、外部のODMメーカーでは製品コンセプトを実物化するための学習活動の分化が見られるという点である。いま一つは、ブランドメーカーのプロダクト・マネジャーは、自社の製品開発システムを、こうした二つの学習パターンを連結し推進するオープンなプラットフォームとなる重要な役割を担っていると考えている点である。このように、バリューチェーンにおける組織内外の学習活動のリンケージによって、ブランドメーカーは同質化競争の激化に対応できる戦略的柔軟性を高めることが可能になる。これは、「高付加価値領域への選択 と集中」戦略の展開を支えるコア・コンピタンスの進化プロセスの特徴とも言える。

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