課題によるパラグラフライティングから口頭発表へ : 英作文から英語の会話までの指導の授業手順(第40回 (2001年度) JACET全国大会)

書誌事項

タイトル別名
  • Focusing on Output : from Process Approach to Oral Presentation(JACET 40^<TH> ANNUAL CONVENTION)

この論文をさがす

説明

本発表では、たくさんの文例を記憶する作業を学期の15回の授業のうちの8回を使って実施した後の、1) 3回にわたって実施された課題を与えてのパラグラフライティングの指導から、2) その間に作成された短い作文のうちの1つを選んでの口頭発表にいたるまでの手順を、報告したい。学生は、千葉県農業大学校研究科1年生の学生20名である。これは、4年制大学では、第3学年にあたる。彼らは、農学科における2年間の間に半期15回の英語の授業を二度受けて及第してきた者である。研究科に入る者は、農学科の総数の1/4程度であり、真面目で素直で、向上心を持った学生達である。彼らは、主に大きな農家の長男であり、将来の日本の農業の指導者的存在となると目されている。農業後進国からの研修者たちを受け入れた際に必要な、日常会話の英語が、読み書きよりも必要であると思われる。また、農業関係の論文を読む際にも、最新の情報は英語で書かれていると言う事から、基本的な読み書きの能力も同時に必要とする。8回にわたる文例の記憶の授業実践については、さておき、今回はプロセスアプローチによるパラグラフライティングの授業手順と、クラス内でのオーラルプレゼンテーションへの手引きの手順に着目する。従って手順は (1) 作文指導、(2) リハーサル、(3) プレゼンテーション、の3種類がある。(1) の作文指導では、1回の授業時間内に3つのテーマが提示され、それぞれのテーマにおける作文指導の時間は25分である。25分の作業が3回くり返された後、まとめをして授業時間が終わる。25分の作業時間のうち、実際に作文に当てられるのは15分であり、その際学生達は辞書の使用は許可されない。作文の長さには指定があって、大体6~7つのセンテンスで1つのパラグラフをつくり、その中で短いお話をしなさい、というものである。テーマは、例えば、「今日の昼食」であったりする。それに対する学生の自由作文の題目は "Orange" であったりする。農業大学の学科には「果樹園芸」という科もあるので、食物は重要なテーマである。プロセスアプローチによる指導を目指すので、細かい文法のチェックや、単語の間違い、綴りの間違いは、一切指摘しない。また、授業時間内に作成した作文の提出を授業の終わりに強要する事もしない。ただ、たくさんのテーマについて、短くても自分の考えを英語で表現する機会を与えるのが目的 である。だが、それぞれのテーマについて作文の後、発表の時間もあるので、学生が作業の手を弛める事はできない。ここで、手順のもととなっているのは Krashen の Comprehensible Output (Krashen 1991) の考え方である。ライティングやスピーキングをする際にも、あまりに難度の高い単語や言い回しを使わず、自分の力に見合った表現をしていくという考えである。この際にも、Krashen のi+1の考えはあてはまると思われるので、だんだんに作文の質をあげていくと言う事も、(1) の指導手順の際の目標であった。テーマは、非常に具体的なものから抽象的なものへと移っていく。(2) のリハーサルの授業手順は、オーラルプレゼンテーションで留意する点の指導と、それぞれの点に着目したリハーサル練習とで成り立つ。非常にリラックスして和やかに過ごした1授業時間であった。(3) のプレゼンテーションにおいては、指導者が母校で受けた「オーラルインタープリテーション」の授業内容をもとに、評価表を作成して、どのような点で評価をするかを明確にし、学生に注意を促した。そして、発表の際に付けた評価は、学期の成績の半分に相当する分量の成績として採点した。それぞれの授業手順は、本発表の際に具体的に説明される。時間の区分けは、詳しく別個にOHPによりグラフで示される。授業の際に用いたプリントの抜粋、学生の作文例、学生のアンケートに見られた意見は、ハンドアウトで示される。また、オーラルプレゼンテーション実施の際に録音したカセットテープから、発表例を再生する。文法的に、完全ではないが、言わんとする内容は十分に伝わり、それにより聴衆の学生達が喜び面白い所では笑うと言う反応をお聞かせしたい。こうした、口頭による発表にいたるまでに、たくさんの規定文を覚える事で、十分な英文のインプットがあり、学生のアウトプットへの意欲が鬱積していた。こうした高い motivation を無視しては、この授業手順の成功はなかった。また、学生達の素直な学習態度と向上心にもになう所が大きい。それぞれの要因を含みながら、学生達が、原稿を見ないで、7つ以上のセンテンスにわたる英文のメッセージを、クラスで発表する事ができるまでのプロセスを報告したい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ