外陰癌52例の臨床的検討

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抄録

1979年1月から1999年5月の間に神奈川県立がんセンター婦人科で経験した外陰癌のうち, 他院初回治療の2例を除いた52例を対象とし, 発症年齢, 組織学的分類, 初発症状, 当科初診までの期間, 進行期分類, 腫瘍マーカー, 治療法, 再発部位, 予後について検討した.組織学的分類では扁平上皮癌が64%, Paget病は29%であり, 進行期分類では外陰癌全体でII期, III期と進行してからの発見が多かった.初発症状として腫瘤自覚が44%, 次いで疼痛, 掻痒感があげられた.自覚症状出現から前医を経て当科初診するまでの期間を検討したところ, 前医初診までは1~6カ月かかった例が46%であった.前医初診から当科紹介初診するまでは1カ月以内が48%と最も多かったものの, 6カ月以上かかっているケースも29%に認められた.総じて自覚症状出現から当科初診まで12カ月以上かかっているケースが52%であった.進行期別の治療法については主治療として手術療法が主に初期癌に, 放射線療法は進行癌に施工されていた.予後について外陰癌全体の5年生存率は55%.進行期別では0期からIV期まで各々100%, 80%, 34%, 78%, 0%となっている.鼠径リンパ節転移陰性群の5年生存率は85%, 陽性群は56%であった.組織別ではPaget病は5年生存率83%と, 扁平上皮癌の46%に比べ予後良好であった.外陰癌のIV期は予後不良であり, 早期発見・早期治療が望まれる.患者の自覚症状からは診断に結びつけにくいことも多く, 腫瘤のみならず掻痒感, 疼痛などの訴えに対しても外陰癌を念頭において診察にあたるべきであり, 慢性的な経過をたどる皮膚病変に対しては積極的に生検を行う必要性がある.また鼠径リンパ節転移の有無が予後に大きく影響するため, 術前にI期・II期と診断された症例においても所属リンパ節転移の評価を明確にすべきと考えられた.

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