26.阪神淡路大震災における市民の初期対応行動に関する研究

この論文をさがす

抄録

非常時の施設や空間の計画にあっても、日常時のそれと同じように、利用者である人間の行動特性を踏まえたものとすべきことはいうまでもない。そのためには、非常時における設計人間像を明確にする必要がある。非常時における対応行動を分析する場合、環境変化との関わりでみる、時間経過との関わりでみる、危急程度との関わりでみる、といった視点が必要となる。地震時の行動は、外的条件としての被災時の環境(地震動、被災状況、環境情報その他)と内的条件としての被災者の属性(地震体験、防災知識、家族条件その他)に規定される。今回の地震においては、環境条件として〔直下型の激しい上下動〕と〔大量の防災ニーズの発生〕という特殊な条件が、また属性条件として〔震災知識の形骸化〕という特殊な条件があげられる。また、時系列的にみると、第1次行動(揺れている最中の行動)、第2次行動(揺れがおさまった直後の行動)、第3次行動(地震後数時間から1日の行動)、第4次行動(数日から数カ月の間の行動)に大別され、それぞれの行動段階において、危険事象の抑制をはかろうとするアクティブな制御行動(消火活動や救助活動など)と、わが身や財産の保全をはかろうとするバッシブな防御行動(保身行動や避難行動など)が交錯して展開される。この論文では、非常時における人間行動特性を明らかにする一助として、阪神淡路大震災を例に、上にあげた対応行動のうち地霧発生当日の第1次から第3次までの市民の行動をとりあげ、考察を行なった。なお、この論文は、平成8年度の建築学会近畿支部に発表したものを、まとめ直したものである。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ