ヨークサック腫瘍のα-フェトプロテイン(AFP)分子異性に関する研究 : 卵黄嚢由来のAFPとの比較

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  • Molecular Heterogeneity of Alpha-fetoprotein in Ovarian or Extragonadal Yolk Sac Tumor

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卵巣および性腺外ヨークサック腫瘍(YST)患者14例の血清α-フェトプロテイン(AFP)をレクチン吸着交叉免疫電気泳動法で分画し, その分子異性を原発性肝癌(PHC, 78例), 胎児卵黄嚢(YS, 5例), 胎児肝臓(4例)などのAFPと比較した. 胎児YSおよび肝のAFPは, 妊娠初期に得られたYSまたは肝の細切片を短時間培養し, その培養上清より得られた. また今回の研究ではレクチンとして, Concanavalin A (Con A), Lens culinaris hemagglutinin (LCH), Phytohemagglutinin E (PHA-E)を用いた. その結果, YST, 患者血清に認められるAFPの分画パターンはYS培養液中の分画パターンと極めて類似しているが, PHC, 患者血清や胎児肝の培養液に認められるAFPとは明らかに異なることが明らかになった. とくに, LCH弱結合分画はYSTおよびYSにのみ特異的に認められ, PHCの患者血清や胎児肝の培養液には全く認められなかった. このLCH弱結合分画は糖鎖の一部にフコースおよびbisecting N-アセチルグルコサミンをもつと考えられており, 羊水中でも胎生の初期にしか認められない. 以上の成績より, YSTにおけるAFPの糖化は胎生期の卵黄嚢に向けた"retrogenetic expression"のあらわれと考えられ, 本研究はYSTの由来を卵黄嚢とする組織学的な見解に生化学的な根拠を与えるものと考えられる.

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