CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)取引は投機的か : 消費者金融会社等を事例として

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  • Credit Default Swap is speculative? : The case study for Japanese consumer finance companies

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2000年代のCDS市場の拡大には目を見張るものがある。一方で、ギリシャ危機での国債価格の下落において、CDS取引の深い関わりが取りざたされた。CDSは相対で信用リスクを移転する取引で、(1)リスクヘッジ、(2)アービトラジ、(3)トレーディングという利用目的がある。CDSと似た取引に保証(ボンド)がある。保証はリスクヘッジのための実需に基づくが、現物なしで取引できるCDS取引は投機的傾向を惹起しやすい。消費者金融大手のアイフル・武富士、あるいは東日本大震災時における東京電力をケーススタディとして、CDS取引がもつ特性をみてみた。CDSと社債には日本では正の同時相関は認められないとされるが、「武富士破綻」時におけるプロミスでは裁定関係がきれいに現れていた。個別銘柄のイベント発生時の関係をみていくことの重要性が高い。つぎに震災前後の電力会社では債券・CDS間の関係に比べて株式・CDS間の関係は安定しており、震災後は債券に比べ株式の反応が速かった。この違いは市場参加者や取引特性に依拠している。即ち、主に外国人投資家が取引を行うCDS市場と株式市場のほうが債券市場よりも親近性がある。最後に、CDS市場は信用リスクの変化を先読みする力があるのか、投機的な市場なのかをCDSのスプレッドカーブの変化を通してみてみた。2005年以降のスプレッドカーブの傾きと曲率の時系列変化をみると、銀行傘下にあるアコムやプロミスの形状は緩やかな右上がりで安定していた。これに対し、破綻したアイフルと武富士は、2008年6月以降は逆イールドの状態が続き、曲率も大きく変化していた。この時期はサブプライム危機が拡大しつつある時期で、世界的な金融危機が同社のCDSプレミアムの形成に大きな影響を与えたとみられる。 CDSが企業の信用リスクをヘッジする取引ではなく「破綻への賭け」となるならば、金融危機においては市場の不安定化を一層高めることが危惧される。CDS取引の投機性と規制の関係を政策的に考えるうえでのメルクマールは、それがシステミック・リスクにつながるかである。今後、店頭デリバティブ取引の電子取引基盤での取引を義務付けること等によって、市場参加者の多様化と取引の透明性向上を図り、CDS市場のプライシングがより適切になされ、それを幅広い第三者が検証することが可能になることが重要である。

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