成熟嚢胞性奇形腫におけるCA19-9の意義に関する研究

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  • Significance of CA19-9 in Mature Cystic Teratoma

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良性疾患である成熟嚢胞性奇形腫(以下MCTと略す)においてCA19-9の産生部位と血中への移行経路について研究した. MCTにおける高CA19-9血症の原因を検討するため, 手術を施行したMCTを用いて酵素抗体法を行つた. 1. MCT 170例(cut-off値以上例87例, cut-off値以下例83例で陽性率51.2%)の血清中CA19-9について手術前値と手術後値について比較検討した結果170例のCA19-9値の平均は手術前83.8U/mlと高値を示したが, 手術後の測定では32.9U/mlと低値となり, 有意差検定では1%の危険率で有意であつた. 以上の事実よりCA19-9はMCTの腫瘍部分より産生されている可能性が考えられた. 2. 血清中のCA19-9値がcut-off値以上を示した31例のMCTとcut-off値以下を示した45例の計76例について免疫組織化学的検討を行つた. CA19-9 cut-off値以上例のうち血清値101U/ml以上を示した23症例9症例の気管支腺組織と4症例の気管支上皮にCA19-9の局在を認めた. 一方血清中のCA19-9がcut-off値以下を示した45症例のうち4例に気管支腺組織および3例に気管支上皮が存在したが, 組織中にCA19-9の局在は認められなかつた. これらの症例についてLewis式血液型を検索してみるとこれらはすべてLewis^a (以下Le^aと略す) (-), Lewis^b (以下Le^bと略す) (-)であつた. 3. MCTの腫瘍部分で産生されたCA19-9がいかなる機序で血中に出現するかについて検討した. その結果, 嚢胞液中のCA19-9値が血清中のそれより高値であることが判明した. このことより腫瘍組織で産生されたCA19-9は直接血流中に排泄される以外に卵巣の嚢胞内に貯留し周囲毛細血管ヘ漏出するルートが推測された. 4. 良性疾患であるMCTにおいて腫瘍マーカーCA19-9が検出されることは癌におけるものと対比して意義があると思う.

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