価値創造の場としての市場社会 : 経済思想と情報学の接合による,私益と公益の両立の論理についての考察

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  • Market society as a place of value creation : A consideration of the compatibility between public and private interest by linking economic thought and information studies

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抄録

「市場社会において,個人の利益追求はいかに社会全体の利益につながるのか」という問題は,経済思想史のテーマであり続けている。しかし,現在に至るまでこれに対する十分な回答が得られているとは言い難い。その原因の一つは,新古典派以降の経済学が,科学としての厳密性を追求するあまり個人の価値観への視座を切り捨ててきたことにある。本稿ではこの問題を解くためにまず,市場社会において利益を追求する諸個人の価値判断がいかになされるかについて,重点的に分析する。ここにおいては,メンガーおよびハイエクの理論を中心的に検討する。次に,市場社会を情報システムとして捉えた上で,西垣の提唱する情報学のモデル「階層的自律コミュニケーション・システム」を援用し,先に検討した市場経済の理論と関係づける。その結果,市場での交換行為が新たに価値を創造することによって,個人の私益の追求が社会的利益の最大化につながるという結論が導出される。この結論は,進展する高度情報化が,現代の市場社会にどのような影響を与えつつあるのかを示唆するものでもある。

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