子宮体癌術前診断に対する子宮鏡検査の再評価

  • 谷澤,修
    日本産科婦人科内視鏡学会・子宮鏡検査調査委員会
  • 三宅,侃
    日本産科婦人科内視鏡学会・子宮鏡検査調査委員会
  • 杉本,修
    日本産科婦人科内視鏡学会・子宮鏡検査調査委員会

書誌事項

タイトル別名
  • Re-evaluation of Hysteroscopy in the Diagnosis of Uterine Endometrial Cancer

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説明

子宮体癌の術前診断とくに進行期診断のために分割内膜掻爬診とともに子宮鏡検査が行われている. 本研究ではこの子宮鏡検査の本邦での実態を調査し, 子宮体癌術前診断における有用性を再評価するとともに, 本検査により癌細胞を経卵管的に腹腔内に散布する可能性があるかどうかを検討した. 1) 日本産科婦人科学会子宮癌登録機関167施設で, 1985年から1989年までの5年間に手術摘出標本で子宮体癌と診断された3,681例を対象とした. 2) 本邦では, 子宮体癌術前診断のために子宮鏡検査を併用して行つている施設は58.1%であつた. 3) 本邦での子宮鏡検査の実際は, (1) 軟・硬性鏡が同程度使用され, (2) 灌流液では生理食塩液かデキストラン液で, 加圧せず自然落下で用い, 使用総量は不定である. (3) 検査から手術までの期間も不定である. 4) 術中腹腔内細胞診により悪性細胞を認めた率は, 子宮鏡検査を施行した症例(子宮鏡施行群)のI期とII期で8.5%と18.8%であつたが, これは子宮鏡検査を施行しなかつた症例(子宮鏡未施行群)の各々7.3%と22.7%を比較しても有意差は認めなかつた. 5) 術後I期と診断された症例の術前診断と一致した率(正診率)は, 子宮鏡施行群も子宮鏡未施行群も91.4%であり, 術後II期症例の術前診断との正診率は, 子宮鏡施行群で79.4%, 未施行群で77.7%であり, 有意差は認めなかつた. 使用した子宮鏡が軟性鏡であつた場合の正診率は98.0%(I期)で硬性鏡のそれ(86.0%)よりは有意に高かつた. 以上の成績から, 子宮体癌の術前診断に用いられている子宮鏡検査によつても, 腹腔内に悪性細胞を散布している可能性は少なく, 進行期診断の正確性は軟性鏡を使用した場合に増していたので, 術前進行期診断には, 軟性鏡を用いたほうが正確な成績が得られる.

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