逆転写酵素を利用したPolymerase Chain Reaction法 (RT-PCR法) による子宮頚癌及びその前癌病変におけるヒトパピローマウイルス16型E6/E7 mRNAの解析

  • 西川,鑑
    札幌医科大学産婦人科学講座
  • 嶌田,雅光
    札幌医科大学がん研究所分子生物学部門:寶酒造バイオ研究所
  • 福島,道夫
    札幌医科大学産婦人科学講座:札幌医科大学がん研究所分子生物学部門

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of Human Papillomavirus Type 16 E6/E7 mRNA in Cervical Cancers and Precancerous Lesions by Means of the Polymerase Chain Reaction with Reverse Transcriptase Reaction

この論文をさがす

説明

子宮頚癌の癌化との関連が注目されているヒトパピローマウイルス16型 (HPV-16) のE6/E7領域はトランスフォーム活性をもち, 発癌遺伝子として重要と考えられている。この遺伝子の発現は, 主に株化された子宮頚癌細胞で詳しく調べられてきた。一方, 臨床検体, 特に病巣の小さいCervical intraepithelial neoplasia (CIN) 組織におけるHPV-16 mRNAの解析は, 得られるRNAが微量であるため困難であった。我々は逆転写酵素反応によりmRNAからcDNAを合成し, Polymerase chain reaction (PCR) 法を応用すること (RT-PCR法) により, 微量の子宮頚癌及びCIN組織 (CIN grade III) 中のHPV-16 mRNAを解析し, 両病変におけるHPV-16 E6/E7遺伝子の発現パターンの変化の有無について検討した。試料については, 子宮頚癌とCINを対象とし, 病巣組織よりグアニヂン酸/塩化セシウム法により, 細胞DNAとRNAを同時に抽出した。mRNAの解析のためには, 抽出した全細胞RNAよりoligo dTをプライマーとして逆転写酵素反応により第1鎖cDNAを合成した。これを鋳型として, HPV-16のE6, E7領域にそれぞれ設定したプライマーを用いて, 30サイクルの増幅を行った。更に, 増幅後のPCR産物をクローニングし, 塩基配列を決定することによりスプライス部位を確認した。検索したHPV-16 DNA陽性の子宮頚癌3例, CIN (grade III) 6例においては, 全例でE6/E7領域のmRNAの発現が認められた。2例を除いて完全長のE6 mRNAのほかに, スプライシングを受けたE6*I, 及びE6IIの2種のmRNAを検出した。このうち, E6Iが最も強く増幅された。今回の検討では, CIN (grade III) と子宮頚癌では, HPV-16 E6/E7 mRNAの発現パターンには変化がみられなかった。以上, RT-PCR法により, 微量の検体中のmRNAの解析が可能となった。この方法の応用により子宮頚部上皮中のHPV-16の発現を調べることは, HPVと子宮頚癌の関係を解明する一つの有力な手段であることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ