20. ノースリッジ地震における被災者の都市公園での収容状況

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抄録

都市の公園緑地は、都市が地震に襲われた場合、一時避難の場、市街地火災から人命を守るための広域避難の場になると同時に、被災者の救助活動、消火・消防活動など、被害を軽減し災害の拡大を阻止するための活動の拠点ともなる。さらには、ボランティア活動など被災者の救援・救護のための活動の拠点、災害から立ち直るための復旧・復興活動の拠点としても大きな役割を果たす。1994年1月17日にアメリカのロサンゼルス市北部を震源とするノースリッジ地震が発生した際には、避難生活を送らざるを得なくなった人々を収容する空間として、都市公園が大いに利用された。ロサンゼルス市のレクリエーション&公園局の被災者収容担当のシニア・オフィサーであるMr. Richard Ginevanから得た資料により、(1)約2万人の避難者のうち、1万4千人近くが都市公園に収容されたこと、(2)そのうち多くの人々が公園内に設置された大型テントに収容されたこと、(3)ロサンゼルス市ではレクリエーション&公園局が災害時の被災者の収容・救護活動の中心的な役割を担っていること、また、(4)この役割を遂行するためにレクリエーション&公園局の職員各位が災害発生時に取るべき行動がシステムとして確立されていること、がわかった。ロサンゼルス市で被災者の収容空間として学校よりも都市公園が大きな比重を占めた背景として、(1)アメリカの小中学校は学校区(SCHOOL DISTRICT)と呼ばれる市から独立した組織によって運営されていること、(2)小中学校は被災した学童の精神的な傷を癒すために早期に授業を再開するべきであり、学校よりは公園の空間に優先的に被災者を収容しようとする考え方がとられていること,(3)社会福祉関係の業務を行う部局がロサンゼルス市に無く、ロサンゼルス郡政府にあること、(4)全ての住民が歩いて行ける範囲内(2.4km以内)でレクリエーションが楽しめるよう、多くの都市公園内に体育館や集会室のあるレクリエーションセンターが作られ、公園管理部局によって維持管理が行われていること、(5)レクリエーション&公園局は都市公園の維持管理を直轄で行っているため、多くの運搬用車両、通信手段、職員を有していること、があげられる。ノースリッジ地震の丁度1年後に、わが国で地震災害に対する備えが十分でなかった阪神・淡路地域が激しい直下型地震に襲われ、甚大な被害が発生し、膨大な数の被災者が生 まれた。そして、学校、公民館、体育館、官公署、都市公園内の建物などの建築物に大部分の被災者が収容されたほか、都市公園内の野外空間でも自動車、テント、防水シートなどを持ち込んで多くの被災者が避難生活を送った。わが国では従来、都市公園は都市内での重要な防災空間であると認識されてはきたが、ほとんど全ての都市の公園管理部局は、職員数の制約もあり、災害発生時の都市公園の使用は市民の自由な使用に任せる方針が取られてきた。また、災害発生時を考慮した公園施設の配置、整備もあまり行われてこなかった。本論は、ロサンゼルス市での地震災害時の都市公園の運用システムを参考として、今後のわが国の都市防災を考慮した都市公園の整備、管理、運用のあり方について考察するものである。

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