子宮頚部異形成の管理に関する研究

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  • Study on the Management of Dysplasia of the Uterine Cervix

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子宮頚部異形成に対する処置はそれぞれの施設や医師によつて異なつている. そこで今回, 教室の10年余の異形成の治療および追跡成績から管理上の問題点を検索した. 加えて異形成の発生・進展に対するprotooncogene productやhuman papilloma virus (HPV)感染の関与について検討し, 以下の結果を得た. 1) 過去10年間の異形成540例の検討では, 半年以上追跡した軽度, 中等度および高度異形成例のうち, regress例は48.8%と諸家の報告より低く, progress例は24.1%とやや高かった. 2) レーザー療法の1回治療成績(追跡6~96カ月間)は, cone法(342例)が97.9%であり, それに比べvaporization法(38例)は89.5%と低かつた. cone法前後での組織所見の正診率は60.5%で, 術前軽度異形成の10.8%(4/37), 中等度異形成の17.9%(22/123), 高度異形成の36.3%(66/182)にconeにより上皮内癌以上の病変が検出された. 3) cone法に生じた不完全切除28例(8.2%)のうち, 24例(85.7%)がその後のfollow upで自然消失した. 3) epidermal growth factor(EGF)受容体(EGF-R)とc-myc遺伝子産物(c-myc 蛋白)の免疫染色陽性率は, 高度>中等度>軽度異形成の順に高く, progress例でのEGF-R陽性率(80.0%)が特に高かった. 異形成におけるHPV陽性率(Vira-pap法)は低かった(16.0%). 追跡例におけるこれら三者の同時検索では, EGF-Rが異形成の予後と最も相関した. 以上から異形成例に対しては, そのgradeが上がるに従い初期癌の混入率も上昇することから, 個々の症例に応じてconeにより十分な最終組織診断を得ることがのぞましく, そのためにはcontact laser cone法がvaporization法に比べて有用と思われた. また, 異形成に対する治療の要否の判定にはEGF-Rの免疫染色も今後有用と考えられた.

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