子宮頸がん検診の有用性と問題点(婦人科がんスクリーニングの有用性と問題点)

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  • Uterine Cancer Mass Screening

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抄録

従来,細胞診を用いた子宮頸がん検診の有効性については数多くの報告があり、これらを分析・評価した厚生省(旧称)研究班報告「がん検診の有効性評価に関する研究班報告」(平成10年3月刊)に詳しい.これらについて概説するとともに,日本産婦人科医会(日産婦医会)がん対策部において収集したデータから,従来より有効性の評価が高いとされている子宮頸がん検診の問題点について分析した.また厚生労働省よりの老人保健事業報告と演者の勤務する東京顕微鏡院および東京都がん検診センターでの子宮頸がんその他の発見率等のデータを比較する.また日産婦医会がん対策部では平成14年度,各地域でのデータをもとに,「子宮頸がん検診を30歳未満の若年層へ拡大するために」という小冊子をまとめたが,この内容についても言及した.厚生労働省老人保健事業報告によると子宮頸がん発見数は漸減傾向にあるとされている.東京都がん検診センターおよび東京顕微鏡院での子宮頸がん発見率も漸減しているが、日産婦医会がん対策部の調査によると,宮城県における1970,80,90年代の子宮頸がん罹患率の推移は,全年齢では浸潤癌,上皮内癌ともに減少しているが,20代では浸潤癌,上皮内癌ともに増加,30代では上皮内癌の増加がみられる.福島県での推移では,40歳以上では高度異形成,上皮内癌,微小浸潤癌ともに減少または一定であるのに,39歳以下ではいずれも増加している.名古屋での1987~1991年と1992~1996年の35歳以下と36歳以上の各年代層での子宮がん患者数の推移を比較した報告では,35歳以下で浸潤癌が2.3%から8.1%に増加し,上皮内癌も17.5%から29.7%に増加している.新潟県では20歳代,30歳代の子宮頸がん罹患数は年代を経るにつれて明らかに増加している一方で,この年代層での発見端緒における検診の割合が低かった.島根県では,1992年には検診での頸がん発見率が32%を占めていたが,1996年には17%まで低下している.また上皮内癌患者の12.4%は20歳代であり,20歳代の子宮頸癌患者の88%は上皮内癌であったが,検診で発見されたものは1例もなかった.茨城県での調査では30歳未満の頸がん検診での子宮頸部細胞診の有所見者は30歳以上と同程度であった.(1)細胞診による子宮頸がん検診の有効性については確立されたものと考えてよい.(2)子宮頸がん検診の受診率は全国的に低下傾向がみられ,その原因は国庫補助金の一般財源化や不況による経済的な側面と,一部 マスコミ等による検診不要論の影響などが考えられる.(3)検診受診者の固定化による発見率の低下,検診対象年齢以下の若年者の罹患率上昇などにより,検診の機能が低下している.来受診者の掘り起こしを全国レベルで計るとともに,若年者検診を普及させる必要がある.

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