SII-4 4. 脂質代謝の電顕オートラジオグラフィ

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抄録

脂質代謝をオートラジオグラフィ(ARG)の手技を利用して研究する上で2つの重要なポイントがあげられる。(1)-a : 固定, 脱水操作, 特に後者の処理中に大半の脂質は流失する。しかし3β-OHグループ, 例えばコレステロールはジギトニン(Dg)を固定液から脱水が終るまで過飽和に加えておくことで99%以上の固定効果が得られる。RIで標識したコレステロールはグルタールアルデヒド(Gl)とオスミウム(Os)の二重固定法で最も流失して貧弱な固定効果を示すのに反し, Gl・Os・Dgの混合固定又はOs・Dgによる単固定で著しくすぐれた固定効果を示した。また, 固定法を一定とすると, 臓器によって著しく固定効果に差がみられ, 中でも精巣上体や褐色脂肪で最悪で, 精巣や肝で最良の結果を得た。(1)-b : 脂蛋出では固定液にタンニン酸やカテキンを加えることで極めてよい固定効果が得られた。トリグリセリド, カイロミクロンの吸収過程の検討は比較的固定され易い。短鎖トリグリセリド(オクタノイック酸)は脂肪滴として見ることはむずかしいが, ARGで追跡するとよくわかる。長鎖トリグリセリドは容易に吸収過程を見ることができ, 小脂肪滴内に現像銀のとりこみをみる。ARGの効果も著しい。(1)-c : 凍結乾燥切片法はGl・Os混合固定後行い得る。従って, 無処理, 無固定の凍結切片よりは遥かに切片を得易いが, ARGのために乳剤を直接その切片上にかぶせることを考えると分解能など問題は残る。(2) : 包埋材料に関しではGl・Ureaの如き全く有機溶媒を用いない包埋法は薄切法に難点は残るが理論上望ましい。GMA (glycomethacrylate)はアルコール脱水を必要とはしないが, 本来それ自身或程度脂溶性の性質を有するから, 注意を十分行う必要がある。生化学的, ならびに排液中の流失RIの比放射活性と組織内の活性残存率の検討を同時に行い, 正しい所見の判定に心掛ける必要がある。

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